探索型ナビゲーションは、環境からの乏しい情報を元に目的地にたどり着くための手段であり、これには効率的な情報の抽出や蓄積、判断、行動の制御など、様々な脳活動が必要である。本研究では、探索型ナビゲーションに関わる神経活動の全貌を解明するために、「課題1 刺激-行動対応解明のための半自動分析方法の確立」「課題2 全脳神経活動の同時イメージング」「課題3 刺激と行動を結ぶ脳機能のモデル化とシステム同定」「課題4 フィードバック介入実験によるモデルの検証」を目指した。 課題1:A02前川との共同研究をさらに発展させて、ドーパミン伝達が欠損したヒト(パーキンソン病患者)と線虫に共通する行動異常を抽出する人工知能技術に関する論文を発表した。 課題2:世界で初めて深層学習技術を用いて三次元時系列画像データ中の多数の細胞核を追跡する技術3DeeCellTrackerの論文をeLifeに発表した。論文執筆の過程で米国コロンビア大学・Hillman教授らおよび自然科学研究機構生理学研究所・根本教授らとの共同研究として、拍動するゼブラフィッシュ幼魚の心筋細胞や三次元培養されたスフェロイド中の多数の癌細胞の追跡にも成功した。この技術の開発により、全脳神経活動の画像データから神経活動データを抽出することが従来よりも大幅に信頼性高くかつ容易に行えるようになった。 課題3:これまでに抽出された線虫全脳神経活動をデータ駆動型動的モデルによって 表現する手法の論文発表の準備を進めた。 課題4:光遺伝学的手法によってフィードバック介入を行うためには、全脳神経活動データにおいて神経細胞同定を行うことが必要である。多色蛍光によって細胞同定する技術NeuroPALを高速三次元カルシウムイメージングと統合し、特徴的な活動を行う神経細胞を容易に同定することが可能になった。この技術を用いた研究成果の投稿準備を進めている。
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