研究領域 | グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立 |
研究課題/領域番号 |
16H06550
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
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研究分担者 |
松本 弘 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (10407653)
久保 慶一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30366976)
遠藤 貢 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70251311)
山尾 大 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80598706)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 破綻国家 / 崩壊国家 / 比較政治学 / 政治学 / 国際関係論 / 紛争 / 平和構築 / ナショナリズム |
研究実績の概要 |
本計画研究は、紛争や内戦などの結果として起こる「国家破綻」の実態、およびその権力の空白に出現する非国家主体やその越境的なネットワークの実態分析を目指すものである。本年度は、その中核となる「破綻国家」での世論調査の準備となる質的調査に力点を置いた。具体的には、1.各国・各地域を専門とする研究代表者・分担者が海外調査を実施し、2.それを研究会(10月と3月の2回実施)やテクストを通して共有することで、共通の言語やコードを導き出し、「グローバル関係学」の方法論の構築につながりうる理論面での議論を探求した。
シリア(末近)、イラク(山尾)、ボスニア(久保)は、実態に世論調査を委託する現地の研究機関との調査方法や論点の摺り合わせを実施し、3月にはこの3国に共通して用いる質問票・質問項目を策定した。イエメン(松本)、ソマリア(遠藤)は、世論調査を委託できる可能性のある研究機関の選定に尽力する一方で、両国とも情勢の悪化が著しいことから調査の実施自体が困難になったときのために、いわゆる国外で暮らすディアスポラたちへのアプローチを行い、ソマリアに関してはロンドンのソマリア難民コミュニティでの調査実施の可能性を確保することに成功した。
成果公開の1つとして、1月には、末近が研究代表をつとめる他のプロジェクトとの共催で、中東におけるイスラーム主義運動の政治的帰結に関するシンポジウムを立命館大学で開催した。そこでは、中東諸国間の越境的なイスラーム主義運動のネットワークの実態だけでなく、その政治的帰結が1つの国の内側に留まらない事実を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度以降に予定している「破綻国家」での世論調査のフィージビリティーを確認することに成功し、また、調査における国家ないしは地域横断型の共通のアジェンダを確定することができたため。他方、イエメンとソマリアに関しては、国内情勢の悪化のためから、世論調査の実施予定を修正せざるを得ない状況が生じたが、オルタナティヴとなる方法や対象の選定が十分に進んだと評価できるため。また、これらの作業を通し、既存の国家を分析の単位とする従来の「破綻国家」研究に対し、国家の枠組みの再編と非国家主体による越境的ネットワークの現出まで射程に入れた新たな分析モデルの試論を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、「破綻国家」における世論調査を実施する。シリア(末近、シリア世論調査研究センター)、イラク(山尾、バグダード大学文学部)、ボスニア(久保、社会科学研究所)に1000サンプルの世論調査の実施を依頼し、その結果の分析を行う。その上で、一定の共通性を有した質問票に対する回答から得られた知見を共有し、「グローバル関係学」の構築のための手掛かりを探る。
第2に、情勢が悪化しているイエメンとソマリアに関する質的研究と世論調査の実施可能性の模索である。松本はイエメンの政治・社会の実態を主に第三国で調査するとともに、それに代わる世論調査実施可能な「破綻国家」の選定も進める。遠藤は、在外ソマリア人の質的研究のための基礎情報の収集につとめる。
第3に、研究成果の発信とフィードバックの獲得である。9月には、ロンドン大学のハッサン・ハキミアン教授を、12月には、イラクの研究所からファッラーフ・アサディー氏を招聘し、研究会を開催する。1月には、シンガポールで国際会議を開催し、各国の研究者からのフィードバックを得る予定である。
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