研究領域 | グローバル秩序の溶解と新しい危機を超えて:関係性中心の融合型人文社会科学の確立 |
研究課題/領域番号 |
16H06551
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
五十嵐 誠一 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (60350451)
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研究分担者 |
高垣 美智子 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (00206715)
丸山 淳子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (00444472)
渥美 利弘 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (20587282)
石田 憲 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40211726)
横田 貴之 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (60425048)
森 千香子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10410755)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | グローバル・コモンズ / メコン / 難民 / 社会運動 / 先住民 / グローバル市民社会 / 文理融合 |
研究実績の概要 |
今年度、研究計画B03班では、研究計画A02班との共催で、2018年2月に国際シンポジウム「メコン・コモンズからメコン共同体へ」を開催した。メコンをフィールドとして、メコンの第一線で活躍する研究者等を招聘し、コモンズに必要な条件や要素を文理の垣根(歴史学、社会学、国際政治学、国際関係論、国際経済学、開発学、農業経済学、生物工学、地理学、公衆衛生学、工学、農学、土壌学など)を越えて議論した。このシンポジウムを通じて当初の研究計画で掲げた移民、人権、環境・生態系、情報技術、農業・食料安全保障、疫病、国境を越えた経済活動、市民社会ネットワークを具体的に取り上げた。また、文理融合とコモンズ研究を発展させるために、メコン機構とMOUを締結し、学術研究連携を進めた。加えて、グローバル・コモンズ研究会を立ち上げ、2017年6月に第1回研究会を開催し、コモンズ概念について班員全体で共有した。2017年7月に第2回研究会を開催し、理系の視座からを取り入れるために、宇宙デブリを専門とする外部講師を招いた。 個別の調査研究も着実に進め、代表者がベトナム・カンボジア・タイを中心にコモンズに関する現地調査を実施した。分担者は、イギリス・オランダ・イタリアで外交資料の調査、ヨーロッパにおけるムスリム移民への排外的感情・差別行為の増加の問題の調査、ザンビアの難民キャンプにおける農業活動・資源配分の実態調査、トルコ・フランス・スウェーデンのムスリム同胞団関係者に対する調査、グローバルな先住民運動の展開に関する研究の整理、経済のグローバル化と模倣品に関する研究をそれぞれ進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、グローバル・コモンズに関する研究を進めるためにメコン地域に焦点を当てた国際シンポジウムを開催した。同シンポジウムに、理系の研究者を招聘するすることで、コモンズをキーワードとした文理融合研究のモデルが完成させるとともに、本研究計画が掲げる多様なイシュー(移民、人権、環境・生態系、情報技術、農業・食料安全保障、疫病、国境を越えた経済活動、市民社会ネットワーク)を取り込むことができた。シンポジウム以降も、成果公表を目指して文系と理系の研究者との共同研究を進めている。中東や欧州、アフリカなど他地域を対象としたコモンズ研究に向けた基盤が確立した。 加えて、計画研究横断プロジェクトである移民難民プロジェクトに横田、高垣、森が参加して主導的に移民難民研究を進めており、特に森はシンガポール国立大学中東研究所とともに本領域国際活動支援班が共催した「Global Refugee Crises」にて研究報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度に実施した国際シンポジウムに基づき、メコンの第一線で活躍する海外の研究者・政策担当者と連携をしながら、コモンズから文理融合アプローチを試みる英文書籍として研究成果を公開する準備を進める。昨年度に立ち上げたグローバル・コモンズ研究会を継続的に行い、メコン・アジア以外でのコモンズ研究の拡大を目指す。関連して高垣が、タイを中心とするメコンの低投入環境保全型農業の栽培体系の構築の実態に関する現地調査を通じて、文理融合アプローチの精緻化に努める。コモンズの前提となりうる思想的・文明的側面については、石田が西欧起源の民主主義と主権国家概念の歴史・思想研究、横田がイスラームの思想研究を中東と欧州の調査に継続して取り組む。加えて、森が、ヨーロッパにおけるムスリム移民への排外的感情・差別行為の増加の問題の調査を進める。これらの調査研究を通じて、西欧VSイスラーム、主権規範VS民主主義などについての研究を発展させる。新たなコモンズの担い手となりうる国境を越えた社会運動については、研究代表の五十嵐がグローバル市民社会に関する研究を継続して進める。また、横田は、グローバルなイスラーム主義運動/社会運動の思想・理念・活動・ネットワークを明らかにする。グローバルなヒト、モノ、カネ、情報関連技術の拡散の影響については、丸山がアフリカを事例にグローバルな社会運動としての先住民運動と情報技術との関係を扱うが、丸山はさらに国際機関と先住民社会との国家を迂回した関係についての研究も推進する。渥美は、アジアを事例に経済のグローバル化に関する研究を継続して進める。とくに渥美は、メコン地域の模倣品とコモンズとの関係の分析に取り組む。当計画研究では、森、横田、高垣が「移民難民プロジェクト」に、石田、丸山が「パーセプションプロジェクト」に参加し、計画研究横断型プロジェクトと本計画研究の連携を進める。
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