計画研究
1. シロイヌナズナのKEA1-KEA6のK輸送活性を検討した結果,Kの輸送機能を確認した.KEA1-KEA6のイオン選択性と本輸送体の性質を明らかにするために,Na輸送活性を検討した.これは,藍藻ホモログNhaSでは,Na輸送活性が推定されることから,互いにホモログ輸送体であるKEA-NhaSの輸送体の構造と機能を調べる点において,有効な比較実験と考えている.今回の測定によって,植物のKEAはK輸送,NhaSはNa輸送のそれぞれの活性を持つ傾向があることが明らかになった(研究代表者).2. シロイヌナズナKEA3のC末端領域を削除したタンパク質を大腸菌に発現させたのち,原子吸光度分析を用いた輸送活性法や反転膜を用いたアンチポーター輸送活性測定を行った.植物を用いた測定では,植物に共存する他の輸送体の活性の影響が排斥できないが,大腸菌の変異株を用いる本方法では,バックグランドの低い系として測定が可能である(研究代表者).3. プロトン駆動力に関与するイオン濃度の調節に関わる,藍藻のKチャネル,Na/Hアンチポーター,Clチャネルのホモログ輸送体の細胞内の膜局在性を検討するためのコンストラクト作成,藍藻発現を行い,チラコイド膜の調製法の確立と細胞内局在性の検討をするめる(研究代表者).4.大腸菌膜に発現させた藍藻の陰イオンチャネルをコードするsll0855遺伝子産物についてパッチクランプ法で当該タンパク質の活性に由来すると考えられる電流の検出と,陰イオンチャネルsll1024を大腸菌膜に発現させることに成功した.また,当該遺伝子産物をパッチクランプ法で解析するための当該発現株の巨大化に成功した(研究分担者).
2: おおむね順調に進展している
1. KEA1-KEA6のNa輸送活性はK輸送と比較して小さく,その中でも,他と比べてKEA1-KEA3はNa輸送活性を示した.一方,KEA1-KEA6のNa/Hアンチポーター活性はほとんど検出されなかった(研究代表者).2. KEA3のC末端領域の削除によって,輸送活性は大きく低下した.植物内にはKEA3下の3つのスプライスバリアントが存在しており,その1つは全長であり,他の2つはC末端領域が短縮したタンパク質をコードする.今回の結果は,短縮タンパク質をコードするRNAを鋳型にするKEA3は機能していないことを示しており,全長の長さをもつRNAが機能的なKEA3を生産することができることが示された(研究代表者).3. 藍藻のKチャネル,Na/Hアンチポーター,Clチャネルホモログが16種類存在する.この中で,局在性が報告されている輸送体は数少ない.この輸送体の細胞内局在性を調べる目的でGFP融合タンパク質を作成して藍藻に導入した(研究代表者).4. シロイヌナズナのチラコイドに由来するblebで約2 GΩのシールを達成した.これはパッチクランプ法による解析が十分可能なレベルである.ほうれん草のチラコイドに由来するblebの効率的調製法を確立した(研究分担者).
1. K輸送活性を示すKEA1-KEA6はQD配列をもつが,Na輸送活性を示すNhaS1-NhaS6はDD配列を有する.この配列の差異によってNaとKの選択性の違いが生じると考えている.このアミノ酸を互交換することを行い,イオン選択性を決定するアミノ酸の可能性を検討する(研究代表者).2. KEA3のC末端領域は輸送活性発現に関わることが植物を用いた実験として報告されている.本研究では,KEA3のみを同一輸送活性の低い大腸菌の内膜に発現させて,膜貫通領域の直後まで削除したKEA3短縮タンパク質を作成して輸送活性を測定する(研究代表者).3.イオン輸送体の細胞内局在性を今回作成したGFP融合タンパク質の蛍光観察によって調べる.その際に,原形質膜とチラコイド膜の分離の確立が重要である.すでに分離方法は報告されているが,分離作業には習熟を必要とすることから,時間をかけて,実験者の習熟を図り,方法をさらに改良しながら慎重に取り組む.イオン輸送体の膜局在性の結果とあわせて本輸送体の存在意義を考察し,イオン輸送体のプロトン駆動力形成にかかわる影響を明らかにする(研究代表者).4. 今年度の結果に基づいて,大腸菌膜を用いて電気生理学的測定をすすめて藍藻の陰イオンチャネルの輸送活性をすすめる(研究分担者).
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