研究領域 | 人工知能と脳科学の対照と融合 |
研究課題/領域番号 |
16H06568
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
疋田 貴俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70421378)
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研究分担者 |
山口 隆司 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (40724258)
マクファーソン トム 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任助教(常勤) (40821898)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 大脳基底核 / 意思決定 / 腹側淡蒼球 / 神経回路 |
研究実績の概要 |
報酬/目的指向行動の神経機構を調べるために、タッチスクリーン学習測定装置を用いて、タッチスクリーンに表示されるキューと報酬を関連づけさせる学習課題を行った。報酬と関連づけさせるキューへのアプローチ行動(sign-tracking)は側坐核の直接路を可逆的神経伝達阻止法を用いて遮断すると増加がみられなくなったことから、sign-trackingに側坐核の直接路が関与することが示された。それに対して側坐核の間接路の関与は見られなかった。次に、側坐核の下流の神経核である腹側淡蒼球について神経回路機構を調べた。エンケファリンプロモーターを用いて腹側淡蒼球の神経細胞を、DREADD法により刺激、可逆的神経伝達阻止法により神経伝達遮断を行なったが、タッチスクリーン報酬学習に影響を与えなかった。一方、側坐核の間接路が関与する忌避学習行動について調べると、DREADD法による腹側淡蒼球の神経細胞刺激により、忌避学習が障害された。このことは、腹側淡蒼球神経回路のうちエンケファリン陽性神経細胞は側坐核間接路の下流で機能している可能性を示唆しており、今後の検証を必要とする。 次に精神疾患における報酬/目的指向行動の神経機構を調べるために、精神疾患モデルマウスとして変異型DISC1トランスジェニックマウスを用いた。このマウスに思春期社会孤立ストレスを加えたところ、薬物依存行動の亢進がみられた。そこで、このマウスの脳内分子変化を検索したところ、DISC1結合蛋白であるPDE4の酵素活性上昇が側坐核特異的に観察された。PDE4蛋白質は間接路細胞に局在しており間接路機能への影響が示唆される。 今後は引き続き、報酬/目的指向行動とその柔軟性における大脳基底核神経回路機構を解析するとともに、精神神経疾患の分子・回路病態を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
報酬/目的指向行動における大脳基底核の特定神経回路の役割を明らかにすることができた。特に側坐核の直接路と間接路、腹側淡蒼球のエンケファリン陽性神経細胞の役割を明らかにし、それぞれ論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
特に精神疾患における報酬/目的指向行動の神経機構を調べるために、複数の精神疾患モデルマウスを用いて検証を行う。薬物依存行動に加えて、タッチスクリーン認知学習課題による報酬学習とその柔軟性、忌避学習に着目して、精神疾患病態を明らかにする。報酬/目的指向行動下での脳内イメージングを確立し、神経機構の解明を人工知能を応用しながら進めていく。
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