計画研究
多階層にまたがるシグナル伝達経路の数理モデル作成のため、生体(マウス肝臓)における長期(4時間)のインスリン作用に注目し、インスリンシグナル伝達経路の多階層ネットワークを作成した。その解析から、肝臓におけるコリン代謝におけるリン酸化とタンパク質量変動による協調的な制御や転写~翻訳の協調的な制御、BCAAの協調的な分解制御など個別の分子に注目した新たな知見だけではなく、肝臓のインスリン応答への戦略的な全体像を明らかにしようとしている。これにより、これまで個別的な応答に注目してきた研究と異なる知見を得られると期待される。また、食餌性肥満誘導マウスの時系列サンプル(5~20週齢)を用いた長期に渡る多階層のシグナル伝達経路の数理モデル作成では、エピゲノム(メチロームと、4種のヒストン修飾データ)、トランスクリプトーム、プロテオーム、リン酸化プロテオーム、メタボローム(親水性・疎水性)の階層のデータをほぼ取得し、データの解析を開始している。その結果、部分的な解析ではあるが、肥満進行においてある週齢からほぼ全ての階層において応答が急激に変動する分子が存在することが明らかになり、これまでに現象だけ報告されていた、肥満進行のスイッチ様の分子メカニズムの端緒が明らかになりつつあると期待される。生体内のインスリン分泌は複数のパターンからなり、それぞれの波形がインスリン応答に重要であることが報告されている。我々は生体内におけるインスリンパターンの重要性とそのメカニズムを明らかにしてきた。現在、これらのメカニズムが肥満の進行に伴いどのように変容して行くのかを明らかにするため、データの取得を行っている。
2: おおむね順調に進展している
マウス肝臓のインスリン応答については解析の目途が立ちつつある。肥満進行に伴う、長期に渡る多階層のシグナル伝達経路の数理モデル作成ではデータをほぼ取得した。また、昨年度発表した論文の新たな展開(肥満に伴うインスリン波形応答変容の解析)を開始するなど、おおむね順調に進展していると考えられる。
多階層にまたがるシグナル伝達経路の数理モデル作成においては(インスリン応答と肥満進行の2つのプロジェクト)、実験データをほぼ取得しており、解析を進める。肥満に伴うインスリン波形応答変容の解析については、実験データ取得を進める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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