研究実績の概要 |
申請者らは、2型糖尿病の代謝アダプテーションの解析における基盤技術として、トランスオミクスを測る、繋ぐ、読み解く解析手法の確立を行った(川田ら、Genes Cells, 2018)。ラット肝がん由来のFAO細胞にインスリン刺激を施し、細胞から抽出したリン酸化タンパク質についてリン酸化プロテオームにより網羅的に取得した(トランスオミクスを測る)。またこれらの網羅的データからインスリン刺激に対して変動するリン酸化たんぱく質のネットワークを明らかにした。 また、これに先行してヒトの血中ホルモンやメタボロームデータの時系列データの解析も行った(藤井ら、NPJ Syst. Biol. Appl. 2019)。これにより生体はグルコースに対して感受性や時定数などを用いてフレキシブルに全身の糖代謝を制御することが明らかとなった さらに、野生型(WT)マウスと肥満マウスであるレプチン欠損マウスob/obマウスに経口グルコース負荷を行い、肝臓でのメタボローム解析・トランスクリプトーム解析・シグナル分子の大規模時系列データを測定した。糖に対して増加あるいは減少する糖応用分子を定義して、それぞれの階層で糖応答分子を大規模に同定した。さらに経路データベースと組合せることにより、野生型マウス及び肥満マウスob/obマウスの肝臓の糖応答代謝反応の制御トランスオミクスネットワークの構築を開始した。これにより個体レベルで初めてトランスオミクスを測る、繋ぐが可能となった。なお、今回の予備的な解析によりトランスオミクス解析により、WTマウスとob/obマウスの肝臓では代謝制御の方法が大きく異なることが明らかとなった。
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