研究実績の概要 |
薬剤耐性の「長期」代謝アダプテーション:トランスオミクスを測る:ヒト乳がん細胞株(MCF7)に代謝阻害剤(ロテノン)や抗がん剤(タキソール)を処理し、長期的な薬剤耐性を獲得した株を取得した。これら耐性株から長期的な応答過程のメタボロームを取得した。さらに代謝フラックス解析を拡張した手法を開発し、幅広い経路の長期的な応答過程を計測するための手法を開発した。 数理代謝モデルを用いた代謝アダプテーションの解析法の構築:トランスオミクスを繋ぐ:これまで構築してきたアンサンブルモデリング法を用いて数理代謝モデルを構築する。 これまで、特に電子伝達鎖阻害剤に着目してがん細胞の代謝アダプテーション機能の解明を進めてきた。そこで、作用機構の異なる抗がん剤(oxaliplatin (L-OHP), paclitaxel (PTX), docetaxel (DTX), 5-fluorouracil (5FU), 4-hydroxytamoxifen (4OHT), doxorubicin (DOX))を悪性度が異なるヒト乳がん由来細胞株MCF-7とMDA-MB-231に処理した時の代謝アダプテーションを調べた。MCF7については薬剤処理後24時間経過時点でL-OHP, 5FU, PTX, DTX, DOX処理群で未処理群と比べて細胞数が有意に減少した。一方MDA231細胞株では、5FU処理群で優位に細胞数が減少した。24時間経過時点での細胞内代謝物質濃度を主成分分析に供したところ、MCF7に対して5FUとDOXを処理した場合に一次代謝で変化が生じることが分かった。5FUにより核酸代謝が阻害され、またDOXの代謝産物から発生したROSにより呼吸鎖が阻害されたことで、それぞれ核酸代謝とTCA回路の中間代謝物質が蓄積したと考えられた。また、出芽酵母1遺伝子破壊株のトランスオミクスデータをもとに、トランスオミクスネットワークを同定する手法の構築を試み、代謝の動的な挙動の再現に必要な制御責任因子の同定に成功した。さらに、各反応のΔGの計測手法および熱力学的な観点から代謝挙動を解析する新たな手法を開発した。
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