計画研究
本年度は,定量分析系の開発において,引き続きGC/MSにおける定量ライブラリの構築に取り組み解析対象親水性代謝物の拡充を図るとともに,当該分析系を用いた実サンプルの分析を実施し,分析系の検証を行った.誘導体化条件等の最適化を実施し高精度で定量データの取得が可能なGC/MS分析系の構築に成功した(論文投稿準備中).また,SFC/MSにおける定量リピドーム解析システムの開発にも引き続き取り組む,解析対象脂質の拡充を図るとともに,当該分析系を用いた実サンプルの分析を実施し,分析系の検証および応用研究を実施した.さらに,GC/MSで分析が困難な高親水性代謝物の分析系として,親水性相互作用/陰イオン交換クロマトグラフィータンデム質量分析 (HILIC/AEX/MS/MS) による新しい親水性代謝物分析法の開発に取り組み,HILC/AEXデュアルモードの新規分析系の開発に成功した(特許出願.論文投稿準備中).その他に,個別分析系の開発として,脂質,有機酸,糖類,核酸類等を対象とした質量分析系を検出器に用いない分析系の開発に取り組んだ(論文投稿済).また,定量解析用安定同位体ラベル化標準品およびMSプローブの開発においては,安定同位体ラベル化標準品の微生物におけるin vivo合成、および、無細胞系でのin vitro 合成に取り組んだ.「安定同位体ラベル化内部標準群 (SILIS)」の生産・調製技術の構築に取り組み,大腸菌の培養条件を最適化することで安価かつ主要な親水性代謝物の13Cラベル化率95%以上を担保したSILIS調製に成功した(論文投稿準備中).また,定量メタボロームデータ解析手法の開発についても,実データを用いて解析アルゴリズム,ソフトウエアの開発に取り組み,ベースとなる解析システムの構築に成功した.
1: 当初の計画以上に進展している
定量分析系の開発において,これまで分析が困難であった高親水性代謝物について,新規カラムを開発するとともに,新たな分離系として親水性相互作用/陰イオン交換クロマトグラフィーを提唱し,タンデム質量分析を接続したHILIC/AEX/MS/MS分析系の構築に成功した(特許出願.論文投稿準備中).その他に,個別分析系の開発として,質量分析系を検出器に用いない脂質,有機酸,糖類分析系を開発し,特に,脂質分析系については,これまで困難であった個々の脂質クラスの定量データが取得可能な分析系の構築に成功した(論文投稿済).上記のとおり,当初の計画より定量分析系の開発は進展している状況である.また,定量解析用安定同位体ラベル化標準品調製技術の開発については,大腸菌を用いて安価かつ主要な親水性代謝物の13Cラベル化率95%以上を担保した「安定同位体ラベル化内部標準群 (SILIS)」の生産・調製に成功した(論文投稿準備中).また,安定同位体製造企業と,無細胞系でのin vitro 合成システムの開発や,18Oラベル体を用いた代謝物定量分析手法の開発にも取り組んでおり,研究開発は当初予定していたより進展している状況である.
定量分析系の開発においては,引き続きHILIC/AEX/MS/MS分析系における対象親水性代謝物の拡充を図るともに,当該分析系を用いた実サンプルの測定を行い,必要に応じて分析系の改良,開発を実施する.また,GC/MSにおけるCCLD定量ライブラリの構築,SFC/MS分析系における定量リピドーム解析システムの開発にも同様に解析対象代謝物の拡充,実サンプルの測定を実施し,必要に応じて分析系の改良,開発についてもとり組む.さらに,生体サンプルを用いて構築した手法のバリデーションを行い,必要に応じて改良・最適化を実施する.定量解析用安定同位体ラベル化標準品の調製においては,引き続き,安定同位体ラベル化標準品の微生物におけるin vivo合成,および,無細胞系でのin vitro 合成に取り組む.高標識化率SILIS生産のための技術開発を進め,各種モデル生物を用いたin vivoでのSILIS合成では使用宿主を拡張するとともに,大腸菌を中心として合成代謝経路導入と代謝工学的宿主改変を適用することで野生型大腸菌に本来含まれない代謝物や,その他の宿主も含めて細胞内存在量の少ない代謝物を多く含有するSILIS生産基盤の構築に取り組む.微量成分の高感度化・絶対定量に向けたMSプローブの開発においては,酸化脂質や特定官能基を有する化合物を対象としたプローブの開発等について取り組む.定量メタボロームデータ解析手法の開発についても,実データを用いて解析システムの構築を進めるとともに,課題を解決するための技術開発に取り組む.以上の次世代定量メタボローム分析法の開発を進めるとともに,現状の分析法を用いて,共同研究者と連携しながら各種代謝アダプテーション研究を精力的に実施する.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 6件、 招待講演 18件) 図書 (1件) 産業財産権 (3件)
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