研究実績の概要 |
本研究計画班では、1)本研究領域のすべての研究班に対して次世代シークエンス解析設備および一連の鋳型調整技術、一次情報解析技術を提供する。2)同時に本研究班でも独自にがん細胞の薬剤応答時の代謝アダプテーションにおける多様性を解明するための基盤技術を開発、実践を行う。 1)については、今年度、本研究班では昨年度に引き続き、領域全体への次世代シークエンス解析設備の提供を行った。計画班岡田班における血球細胞分化についての網羅的エピゲノム解析について、また公募班河岡グループに対して、担癌マウス臓器ネットワークにおけるトランスクリプトーム解析の支援を行った。これらの成果については、それぞれの班との共同研究との形で論文発表を行うことができた。現在、両班との共同研究をさらに進めて下記に示すようなシングルセル解析さらにはその発展型である空間トランスクリプトーム解析を行う予定である。 2)について、本研究班独自の研究として、がん細胞系に対して抗がん剤がどのように遺伝子発現制御ネットワークに摂動を及ぼすか、その定式化と効果予測可能性を検証している。安価・高効率にRNA Seq/ATAC Seqライブラリーを構築する方法を開発し、肺腺がん培養細胞パネルについて一連のトランスクリプトームとエピゲノムデータの収集を行った。23種の細細胞株、100種類の薬剤について薬剤摂動を加えた合計3,240のRNA-seqライブラリーと3,393 ATAC-seqライブラリーより得られた多層オミクスデータから遺伝子発現制御ネットワークを構築し、その応答責任モジュールを同定した。この成果は学術論文として発表することができた(Onodera et al Sci. Rep, 2020)。さらに、多様な薬剤ごとにその効率的な制御点を同定、将来の抗がん剤開発シーズ探索の基礎データとした共同研究を現在、展開している。
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