研究実績の概要 |
本研究計画班では、1)本研究領域のすべての研究班に対して次世代シークエンス解析設備および一連の鋳型調整技術、一次情報解析技術を提供する。2)同時に本研究班でも独自にがん細胞の薬剤応答時の代謝アダプテーションにおける多様性を解明するための基盤技術を開発、実践を行っている。 1)領域全体への次世代シークエンス解析設備およびエピゲノム・トランスクリプトームを中心とした多層オミクス解析等についての情報解析プラットフォームの提供を行うことができた。特に公募班の若手研究者との間にいくつかの共同研究を樹立、その成果を現在、論文投稿中である。現在、これらを拡大したシングルセル解析さらには発展型である空間トランスクリプトーム解析を行う予定である。 2)これまでにバルク細胞においてトランスクリプトーム-エピゲノムに関する発現制御ネットワーク解析に依拠した抗がん剤作用モジュールのカタログ化に成功している(Onodera et al, 2019)。また、long read解析を駆使した肺がんの多層オミクス解析によりスプライス異常に伴うネオ抗原候補の同定ができた(Oka et al, 2021)。さらに、多様な薬剤ごとにその効率的な制御点を同定、将来の抗がん剤開発シーズ探索の基礎データとした共同研究を現在、展開している。また、昨年度までにこれらのアプローチを1細胞レベルへと計測を精密化、その細胞多様性の解析を行った。肺腺がんモデル細胞株を対象に10XGenomics社から上市された同一細胞でのエピゲノム-トランスクリプトームの同時解析(scMultiome解析)を実施した。外的刺激に対応してエピゲノム変化を伴わないトランスクリプトーム変化が多く惹起され、それが長期にわたって持続することでエピゲノム変化へと固定されていく様子を観察することができた(Kashima et al, submitted)。
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