計画研究
(A-1) 電子顕微鏡画像からの神経回路構造の同定法川口班(A01班)と連携して、連続切片電子顕微鏡画像から神経細胞・回路の詳細構造を決定する手法の開発を進めた。本手法は、画像前処理、機械学習に基づくセグメンテーション、および、三次元セグメンテーションの組み合わせになる。また、人工知能分野において画像変換のための手法が開発されつつあるので、それを用いた転移型の画像セグメンテーション法の開発を進めた。(B-1) 多ニューロン4Dイメージングデータからの動的機能回路抽出法の開発スパースモデリングの手法を用いて、マウスの多ニューロン4Dイメージングデータからの動的機能回路抽出法の開発を進めた。尾藤班(A02班)の取得したマウス脳深部からの内視顕微鏡データに適用した結果、動的機能回路の賦活により社会性に関わるデコードが可能であることが分かった。(C-1) 精緻な3次元小脳神経回路のデータ駆動モデリングを開始した。顆粒層の顆粒細胞・ゴルジ細胞・分子層の平行線維・プルキンエ細胞層のプルキンエ細胞に着目し、小脳皮質における情報処理の最小構成単位である小脳パーセプトロン回路を構築した。小脳機能イメージングデータをモデル同化した数値シミュレーションを実施し、課題中の動物の行動を再現可能な予備的結果を得た。本項目は、分担者(山崎)が、喜多村班(A02班)から得た小脳機能イメージングデータに基づいて実施中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の29年度計画によれば、電子顕微鏡からの神経構造同定法の実装および神経構造の実データに基づく評価を予定していたが、実装に必要な大規模神経画像処理の専門知識を持つ研究協力者の母国への帰国が判明した。急遽、研究代表者が他の研究協力者らに、実装に必要な知識である画像処理の指導を行う必要が生じたため、6ヶ月間の計画延長を行った。一方で、上記の実績概要に示すように、(B-1)多ニューロン4Dイメージングデータからの動的機能回路抽出法の開発、および(C-1)精緻な3次元小脳神経回路のデータ駆動モデリングの開発については順調であり、(A-1)についてもバックアップ研究を実施したので、結果として、「(2)おおむね順調に進展している」と判断された。
(A-2) 電子顕微鏡画像と光学顕微鏡による同一領域の異モダリティ計測からの構造決定手法の開発を、川口班(A01班)と連携して、継続実施する。画像処理プロセスの、汎用画像処理ユニット(GPGPU)を用いた高効率化、および、大規模ストレージを用いたパイプライン化を進める。(B-3) 動物の条件付け学習に関わる長時間の、環境状態(入力刺激を含む)、中枢神経活動、行動の同時記録データに対し、中枢での動的内部表現を求めることのできる手法の開発を進める。また、意思決定課題を遂行中のヒト核磁気共鳴画像からのブレインデコーディングを題材にして、春野班(A03班)と連携して、複雑な環境におけるヒトの脳情報動態機構の研究を進める。(B-4) 機能イメージングデータから動的機能回路を抽出する手法(エンコーディングモデル)を実際のマウス4Dイメージングデータに適用する。松崎班(A01班)のマウス運動熟達過程のデータへの適用と評価を進める。(C-2) (C-1)で構成した精緻な小脳神経回路モデルに、各神経細胞の膜パラメータおよびシナプス可塑性を割り当て、実際に苔状線維からスパイク入力を受け取り動作するような、精密な小脳回路モデルを構築する。分担者(山崎)がこれまでに開発してきた、GPGPU上での神経回路シミュレーション技法や高度並列計算技法を駆使し、高速かつ効率よくシミュレーションを実施できるようにする。喜多村班(A02班)から得られる小脳機能イメージングデータにもとづいて、実際の小脳の神経ダイナミクス、特に運動熟達過程での適応的ダイナミクスを再現する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
Scientific Reports
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41598-018-22506-3
PLOS Computational Biology
巻: 14 ページ: e1006029
10.1371/journal.pcbi.1006029