研究領域 | 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 |
研究課題/領域番号 |
17H06311
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
川口 泰雄 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (40169694)
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研究分担者 |
植田 禎史 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00511015)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 前頭皮質 / 錐体細胞 / 局所回路 / 皮質線条体投射 |
研究実績の概要 |
前頭皮質局所サブネットワーク形成の機能的意義の理解と、前頭皮質固有の回路則の解明を目指して、以下の実験・解析を進めている。 (1) 大規模シナプス結合解析を目指した光顕・走査型電顕相関解析: 従来の電顕によるシナプス構造同定を局所回路解析までに拡張するために、テープ自動回収型連続切片切削装置(ATUMtome)-走査型電顕(SEM)システムを導入した。走査型電顕によるシナプス同定に適した組織処理法を更に改善した結果、興奮性シナプスに比べて同定しにくい、抑制性対称型シナプスの微細構造の解析も十分可能になった。新規テープ・組織処理法がマルチチャネル走査型電顕の観察にも有用であることも示した。 (2) 皮質線条体投射特異性を導入した報酬予測誤差計算モデルの構築: 動物は過去の行動評価と現在の状況に基づいて適切な行動を選択する。大脳基底核が選択した行動の期待値、それによって得た報酬、次の行動で期待される有用性という、異なる時期の価値を合わせて報酬予測誤差を計算することが考えられる。私たちは以前に、前頭皮質にある二種類の錐体細胞、終脳内投射細胞と錐体路細胞から線条体への入力がこの時間差誤差計算に使われるモデルを提案した。今年度の共同研究によって、基底核の直接路細胞が高報酬を示唆する予告感覚刺激に反応する一方、間接路細胞は低報酬の予告刺激に応答し、別の行動への変更を促進することを見出した。これを説明するためにモデルを以下のように改訂した。終脳内投射細胞から直接路・間接路細胞への結合が、それぞれ、選択しようとする行動の有用性・不利益を、錐体路細胞から間接路細胞への結合が既に選択した行動価値を表す。これらが黒質網様部を通してドーパミン細胞に伝えられ、報酬予測誤差が計算される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新皮質局所サブネットワーク理解に必須である、走査型電顕によるシナプス回路解析に必要な超薄連続切片作成・電子密度染色・電顕像取り込み技術が進歩した。前頭皮質の基本局所回路を理解するために必要な皮質線条体投射回路モデルを改訂することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前頭皮質固有の回路則の解明のために、これまでに開発してきた走査型電顕技術を可能な範囲の大規模結合解析に適用する。線条体投射系などのシステム回路と局所興奮性・抑制性サブネットワークを統合的に理解するための機能構造相関解析を推進する。
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