研究領域 | 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 |
研究課題/領域番号 |
17H06312
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾藤 晴彦 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (00291964)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 神経科学 / カルシウム / 海馬 |
研究実績の概要 |
本計画では、以下の3点の研究項目に焦点を絞り、計画研究を実施してしている。項目1)活性化細胞集団と記憶痕跡を多領野で同時に標識する活性化回路標識操作法を実現し、Ca2+イメージングと組み合わせ、海馬から大脳皮質に至る記憶構造ループにおける脳情報動態を解明する。項目2)記憶痕跡の大脳皮質での創発・覚醒を制御する興奮性・抑制性細胞の活動バランスを、記憶課題遂行中の自由行動下マウス脳のライブCa2+イメージングにより明らかにする。項目3)記憶・情動における多領野間連関・並列処理を司る脳情報動態を光遺伝学的に再現し、情報表現にとって必要十分な成分を解明する。 令和2年度には、前年度までに得た成果に基づき、以下のような研究を実施した。項目1では、脳全体での記憶痕跡標識操作を実現する遺伝子改変マウスを用い、記憶痕跡の性質を持ちうる海馬歯状回細胞ならびに前頭皮質細胞のそれぞれが、近時記憶の想起、遠隔記憶の想起に必要十分かについて検討した。さらに記憶痕跡活性化の新たな指標としてCREBリン酸化のリアルタイムイメージングを試みた。項目2では、活動依存的人工プロモータの改変実験により、行動課題遂行中の抑制性神経細胞アンサンブル操作が実現可能かについて予備的検討を実施した。項目3では、近時記憶から遠隔記憶へ切り替わるタイミングにおいて、大脳皮質記憶痕跡の修飾が行われるのか、その際に、記銘期の海馬中心的記憶痕跡細胞と相互作用するか否かについて、実証実験を続けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、項目1)について、活性化細胞集団と記憶痕跡を多領野で同時に標識する活性化回路標識操作法を実現し、現在Ca2+イメージングとの組み合わせを試みている。また、項目2)における興奮性・抑制性細胞の活動バランスを、頭蓋固定化でイメージングする手法を確立している。さらに、項目3)では、記憶・情動における多領野間連関・並列処理を司る脳情報動態を光遺伝学的に再現している。以上より、各研究項目について、順調に検討が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標とする各項目について、最終年度においては、海馬から大脳皮質に至る記憶構造ループにおける脳情報動態を解明し、記憶課題遂行中の自由行動下マウス脳の興奮性・抑制性細胞のライブCa2+イメージングを実現していく。これにより、記憶・情動の長期記憶に関わる情報表現にとって必要十分な各種成分のさらなる理解を進め、最終年度研究成果の取りまとめに役立てる計画である。
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