研究領域 | 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 |
研究課題/領域番号 |
17H06314
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
春野 雅彦 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報工学研究室, 研究マネージャー (40395124)
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研究分担者 |
吉田 和子 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (30379599)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 脳情報 / 計算理論 / 7テスラMRI / ダイナミックス |
研究実績の概要 |
脳情報動態の観点から社会的意思決定の脳計算メカニズムを理解するためには選択された行動を説明するだけでは十分ではなく、その意思決定に掛かった時間のばらつきを説明できる必要がある。そこで、2019年度は、信頼ゲーム、最終提案ゲームを対象として、Drift Diffusion Modelの拡張により、不平等回避、罪悪感回避の中でも直感的なもの、熟慮的なものを行動と反応時間からモデルにより自動的に推定することを試みた。その結果、協力/非協力、受理/拒否といった行動選択はほぼdrft項のパラメータのみで説明できるのに対し、試行ごとの反応時間のばらつきはbias項のパラメータを用いなければ説明出来ないことが明らかになた。特に、意思決定の微妙な条件に対しても素早く反応する時にbias項の情報が重要な働きをすることが分かった。このモデルで推定した動的パラメータを3TTfMRIデータの解析に適用すると扁桃体-側坐核の経路の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は2018年度までの基本的なvalue-based decisionの枠組みを超えて、各試行の反応時間のばらつきという脳情報動態にとって本質的な現象を説明する計算モデルを構築し、その脳内メカニズムをmodel-based fMRIにより明らかにすることに成功した。 また、研究協力者である大阪大学の田村と榎本が準備をしている霊長類実験においても同じ枠組みを用いてより詳細な神経回路基盤を特定する準備が進んでいる。レイヤーの情報処理については、7T fMRIのSN比の問題で2019年度に大きな進展を得るには至らなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各試行の反応時間のばらつきを生む脳の計算モデルをより精緻化し、ヒトとマカクザルの研究をパラレルに推進するとともに7T fMRIをVASOシーケンスを用いて撮像することで、特にdrift項に対応する計算プロセスにおいて帯状回と背外側前頭前野の各レイヤーが果たす機能を明らかにする予定である。
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