研究領域 | 熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床 |
研究課題/領域番号 |
17H06320
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
川村 賢二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90431478)
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研究分担者 |
植村 立 琉球大学, 理学部, 准教授 (00580143)
本山 秀明 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (20210099)
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20421951)
澤柿 教伸 法政大学, 社会学部, 准教授 (70312410)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 南極氷床 / アイスコア・氷床コア / 氷河・氷床 / 氷床-海洋鵜相互作用 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
アイスコア研究では、特に温暖な「スーパー間氷期」で直近の最終間氷期(約12.5万年前)について、ドームふじアイスコアの年代決定精度を大幅に上げるため、酸素/窒素比ほか7種類の気体成分の分析を平均分解能500年で実施した。また、連続融解法により、年代同期に使用するメタンやダストなどの分析も開始した。 現場観測では、東南極リュッツォ・ホルム湾に流入するラングホブデ氷河における熱水掘削により、棚氷全域をカバーする4か所で棚氷下の海洋環境の観測に成功した(底層水班、固体地球班、生態系班連携)。また、沿岸から内陸にかけての涵養量や、氷床表面形状、表面流動などの氷床表面の観測と、氷床レーダーを用いた氷厚(基盤地形)や内部層の観測を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アイスコア等を用いた長期の気候変動の研究では、個別試料の融解法分析や連続融解分析などの分析技術の準備や改良が順調に進み、アイスコアの実試料の分析を順次進め、研究目的である長期の大気組成と気候状態の復元が進んだ。特に、今後計画しているモデル班との連携研究において重要となる、古気候データの年代制約について、目的に沿って「スーパー間氷期」に優先度を与え、最終間氷期の年代精度を大幅に高めた。また、切削法空気抽出装置の新規開発を開始した。 現場観測では、南極の沿岸から内陸にかけて様々な観測を当初計画以上に展開した。沿岸から内陸にかけての広域観測では、雪尺による雪面高度データの取得や、氷床レーダー観測による氷厚や内部層の観測を実施した。過去の表面質量収支や氷床への空気の取り込み過程を押さえるため、ドームふじ近傍での浅層掘削や、過去に採取したフィルン空気の分析も行った また、ラングホブデ氷河での熱水掘削が成功し、主な研究目的の一つである棚氷下の海洋観測を達成した。当初予定した観測に加えて、地震波や干渉氷レーダなどの測器を用いた新しい観測も実現した。
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今後の研究の推進方策 |
・ドームふじコアの年代制約と海底コアとの年代統合や古環境の復元に向けて、アイスコアの分析を進める。特に、約40万年前のスーパー間氷期を対象に、気体や10Beの分析に力を注ぐ。硫酸エアロゾルの起源推定のため、硫酸塩粒子の硫黄同位体比を分析する。H128コアの化学成分データを取得・解析し年代決定方法の検討を行う。 ・海底コア年代をドームふじ年代に統合する試みを開始する。まず最終間氷期を対象に、アイスコアの10Beデータと海底コアの地磁気強度データとの対比や、アイスコアのメタンやO2の同位体データと海底コアの氷河砕屑物や表面海水温データとの対比を試みる。 ・東南極ドロンニングモードランド地域の表面質量収支の変動を明らかにするため、1990年代以降の複数の衛星高度計データを現地観測データで検証し二次元データを構築する。その変動に影響する気象要因解明のため、気候モデルや再解析データの降水量、風向、風速と表面質量収支との相関関係を解析する。経年変動を解析し、重力衛星や領域気候モデルで推定されたDML地域の近年の氷床質量増加の要因を考察する。 ・初年度に観測した棚氷下の海洋データと、棚氷下に設置した係留系から通年で得られるデータを用い、季節・経年変化を含めた底面融解や堆積環境、生態系の全容解明を進める。現場のデータと人工衛星データや気象データを総合的に解析し、海洋変化と氷床変動の関係や、氷床融解が海洋環境にもたらす影響を調べる。
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