計画研究
<氷床コア関連>分析手法の開発・改良を継続しつつ氷床コア分析を進めた。特に、約12万年前や約40万年前の特に温暖だった間氷期に着目して、試料分析や取得済みデータの解析を進めた。取得データを年代制約条件とした氷床流動/涵養モデルによる年代計算の準備も開始した。連続融解法によるメタンや化学成分の分析も行った。南極氷床への空気取り込み過程や氷と空気の年代差の理解のため、取得済みのフィルン空気を分析し、南極内陸のNDFN地点において新たなフィルン空気採取を行った。南極沿岸における海氷由来物質の動態を調べるため、昭和基地において冬期の積雪を採取した。開発では特に、CO2濃度等の分析に重要な切削法空気抽出装置の各部の設計と試験品の調達などを行った。<内陸雪氷調査>南極内陸での氷床レーダー探査を中心とした国際共同雪氷観測(日本、米国、ノルウェー)を実施し、氷床流動の長期変動や、沿岸から内陸にかけての質量収支の解明につながるデータを取得した。また、氷床モデリングの基礎となる基盤地形や流動に関する知見を得るため、前年度までにドームふじ周辺と南極沿岸から内陸にかけての広域で取得した氷床レーダーデータや雪尺データの解析を開始した。<氷河・海洋観測>前年度にラングホブデ氷河の熱水掘削によって取得したデータを解析し、棚氷下の海洋環境(塩分・温度・循環・同位体)から棚氷下の水の動きを再現し、底面融解速度を定量化した。その結果、海洋深層の暖水が棚氷の下に侵入して氷を大量に融解し、融解水と混合しながら沖に出ていく様相を克明に捉えた。また、棚氷下で採取した海水・海底堆積物の分析を進めた。ラングホブデ氷河において自動稼働中の測定機のメンテナンスないし回収を行い、棚氷下の海洋環境と氷河流動の通年にわたるデータを取得した。
2: おおむね順調に進展している
アイスコア分析の一部項目に予期せぬ事態による遅れがあるものの、アイスコア解析・現場観測ともに計画以上に進んだ部分もあり、他の班との連携も開始していることから、概ね順調に推移していると評価した。氷床コアのデータを用いた論文出版でも目立ったものがあり、今後の連携研究に向けた進捗としても順調である。
主に令和元年度について記載する。<氷床コア関連>ドームふじ氷床コアの各種分析やデータ解析により、環境復元や変動メカニズム解析を進めるとともに、同コアと他のアイスコアや海底コアとの年代統合や環境復元に関するデータをさらに蓄積する。放射強制力として重要なCO2濃度復元を目的とした切削法抽出装置の開発を継続する。H128コアの化学成分データを解析し、年代決定方法の検討を行う。年代統合の対象年代や具体的手法の検討を開始する(特に最終間氷期を対象に、アイスコアのメタンやO2の同位体、ダストのデータ、海底コアの氷河砕屑物や表面海水温、ダストのデータの可能性検討)。また、10Beデータと古地磁気強度を用いた年代対比などの、新たな分析の有効性についても検討する。フィルン空気や積雪の分析なども引き続き進め、氷床コアへの環境情報記録プロセスの理解も進める。<内陸雪氷観測>東南極ドロンニングモードランド(DML)地域の表面質量収支の変動を明らかにするため、1990年代から本課題による観測までに取得された、雪尺やピット観測データを解析し、観測データの広域代表性や不確実性を検討する(衛星やレーダによる質量収支データの面的拡張の基礎)。その変動要因の解明のための準備も進める(モデル班や公募課題による領域気候モデル開発や過去の気象データによる研究との連携準備。特にDML地域で報告された近年の氷床質量増加の特徴や要因、長期トレンドの有無などの解明に向けて)。<氷河・海洋観測>初年度に観測した棚氷下の海洋データと、棚氷下に設置した係留系から通年で得られるデータを用い、季節・経年変化を含めた底面融解や堆積環境、生態系の全容解明を進める。現場のデータと人工衛星データや気象データを総合的に解析し、海洋変化と氷床変動の関係や、氷床融解が海洋環境にもたらす影響を調べる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 10件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (55件) (うち国際学会 39件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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