研究領域 | 熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床 |
研究課題/領域番号 |
17H06322
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
野木 義史 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (90280536)
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研究分担者 |
吉田 弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 次長 (00359134)
沖野 郷子 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30313191)
巻 俊宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50505451)
青山 雄一 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70270452)
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
末吉 哲雄 国立極地研究所, 国際・研究企画室, 特任准教授 (80431344)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 地球観測 / 海洋工学 / 海洋探査 / 環境変動 / 地球変動予測 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ロボット技術等の無人観測技術を、未探査領域である南極沿岸の海氷域と沿岸域に適用することで、新たなデータ取得を目指すものである。 2020年度に、全体の会合を9回開催し、現況や今後の方針等について議論した。 AUVに関しては、水槽実験や実際の海洋域での試験に加え、自律航行実験も実施し、修正および調整を実施した。東京海洋大学の練習船海鷹丸による南極航海に参加し、氷海域でのAUV試験を実施予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、南極海航海が中止となったため、冬期の北海道紋別港における氷下海洋域において、自律航行の試験も含めた運用試験を実施した。さらにAUV回収のための、小型の遠隔操縦ロボット(ROV)のハードウェアの開発が概ね終了した。AUV展開の難しい沿岸域の海氷・棚氷下の地形計測用に、氷上に開けた穴から展開可能な小型ROVの基本的な開発は終了し、実際の運用に向けた最終調整を行った。また、AUV探査を行う予定である南極周辺の既存海底地形データの収集と整理を継続するとともに、AUV搭載マルチビーム測深機データの解析手法の検討を行った。 回収を行った時系列データを衛星回線で送信する係留式ブイシステムについては、南極ケープダンレー沖での水温・塩分鉛直プロファイルの取得に成功し、データ解析を行った。長期観測に向けた機器の調整も合わせて行っている。 大陸域での観測では、固定翼・回転翼UAVを用い、昭和基地上空での空撮データを実施し、これまでのデータとともに昭和基地の表面地形図を作成および精度評価を継続した。さらに、固体班と連携し、積雪による地殻変動や重力変化の評価も継続した。また、氷河・棚氷の融解量把握のため白瀬氷河上において、氷河氷厚レーダーApRES(Autonomous phase-sensitive Radio-Echo Sounder) の観測も継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋域の観測では、AUVに関しては、水槽や海洋域での試験は予定通り実施し改良が進んだ。一方で、南極氷海域におけるAUV試験は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、予定していた南極観測航海が中止になったため、実施できなかったが、北海道紋別港での氷下海洋域での試験に切り替えて実施し、氷下海洋域での運用等の更なる調整を行った。また、AUV回収を行うためのROVもほぼ組立を終了し、最終的な機器の調整を実施し、基本的なAUV回収の実験を開始した。AUV展開の難しい沿岸域の海氷・棚氷下の地形計測用に、氷上に開けた穴から展開可能な小型ROVの基本的な開発は終了し、実際の運用に向け順調に準備を進めている。昭和基地周辺等の南極周辺の既存海底地形データの収集と整理も継続し順調に進行している。さらに、南極ケープダンレー沖に設置し回収した係留式ブイシステムの観測データの解析が進み、また今後の運用に向けた機器の調整を行った。 大陸域の観測では、固定翼・回転翼UAVによるデータの取得とともに、地形図の精度評価が進んでいる。さらに、時系列測定型氷厚レーダー(ApRES)による観測も継続し、データが取得できている。 以上のように、海洋域および大陸域での観測において、新型コロナウィルス感染拡大の影響により一部実施できなかった内容もあるが、それ以外は概ね予定通り実施できた事から、区分(2)とする。
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今後の研究の推進方策 |
AUVの開発に関しては、水槽や海洋域での試験を継続し、更に令和2年度に実施できなかった、実際の南極海氷域での動作試験を計画し、南極への展開能力の検証を実施し、改良を進める。また、AUV回収システム用ROVは更なる試験を行い、実際の運用に適用する。氷上に開けた穴から展開可能な小型ROVに関しては、南極域での観測を実施する。加えて、南極周辺の海底地形データのコンパイルを完成し、AUV搭載マルチビーム測深機データの解析手法を確立し、実海域動作試験で得られた測深データの解析を行う。 プロファイリングブイ・システム関しては、データ解析を実施し、底層水班との連携し研究を進め、今後の開発方針も検討を継続する。 UAV観測に関しては、精度評価等の結果をもとに、測量方法の改良を行い、南極でデータを蓄積し、さらにレーザー測量計を搭載した回転翼UAVの構築および観測を実施しさらなる高精度観測化を図る。氷河氷厚レーダーの観測に関しては、ApRESのデータをから、白瀬氷河の底面融解量の時系列データセットを作成し情報共有を行い、領域内融合研究の促進を図る。
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