研究領域 | 熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床 |
研究課題/領域番号 |
17H06323
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 彩子 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30272537)
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研究分担者 |
岡 顕 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70396943)
吉森 正和 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20466874)
齋藤 冬樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 技術研究員 (60396942)
Greve Ralf 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (90374644)
草原 和弥 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 研究員 (20707020)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | Climate modelling / atmosphere-ocean model / Ice sheet modelling / paleoclimate modelling / Future projection |
研究実績の概要 |
◆南極氷床モデリング:氷床モデルを南極用に設定し海洋ー氷床相互作用や底面過程を改良した。さらに将来予測実験ISMIP6の実行に向けた準備を行なった。棚氷底面融解を外力とする氷床の定常・非定常実験を実施。・気候モデルによる温暖化実験結果を入力に用いた実験や、長時間スケールの氷床変動再現実験を開始した。・南極変動に関わる古気候氷床実験を実施。モデルの不確定性の評価を行った。 ◆南極氷床の質量収支解析:・MIROCの降水量や気温や大気循環に関するデータによるモデル検証を行い。20世紀再現バイアスなどとの関係を調べた。 ◆南大洋モデリング:・氷期の数値実験に基づいて物理環境など各要素の再現性についての検討を進める。・底層水班と連携した南大洋における底層水形成や海氷分布などの検討を行った。生態系班と連携した南大洋での生物ポンプ過程の検討。氷床・気候班と連携した氷床コアによるCO2濃度データとモデル結果との直接の比較、氷期CO2低下の理解に向けた研究を進めた。過去及び将来における海洋酸性化に関する数値実験を実施した。氷期のCO2のモデリングについて論文執筆を進める一方、氷期から退氷期の実験の準備を進めた。 ◆長期気候-氷床モデリング:過去数百万年の気候と氷床の変化に関して大気海洋結合モデルMIROCの結果と南極氷床モデルを組み合わせた長期気候-氷床モデル実験を準備し、固体地球班との連携による古気候データとの比較検討によって、南極氷床と気候の変動メカニズムを調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
大気・海洋・氷床・物質循環の各要素間の相互作用プロセスから研究を進める。 (大気・氷床間)近年の東南極域における涵養量の増加について、気候モデルや再解析データ、内陸での雪尺観測データを用いて要因を解析する。涵養量の増加イベントを現場観測で検出し、気候モデルではどの程度捉えられ、気候が変化した際の頻度変化を明らかにする。 (大気・海洋・海氷間)気候モデルの、南極における深層水形成過程の改良に取り組む。深層水班で得られた海洋データを基に、気候モデルでの南極底層水形成過程を向上させる。この改良したモデルを用いてより現実的な退氷期実験を開始する。この気候モデル実験を海洋モデルと組み合わせて、退氷期の南極棚氷底面融解, 海洋物質循環, 南極底層水への影響を調べる。 (氷床・海洋間)高解像度周極モデルを構築する。高解像度化したモデルを使うことによって、海氷形成に伴う高密度水形成と小スケールの地形にコントロールされる周極深層水の大陸棚への流入という、南極沿岸域での水塊形成のプロセスをより正確に評価することができ、南極氷床の質量収支理解の高度化につながる。 (海洋・炭素循環・生態間)他班と連携しながら海洋モデルによる氷期の数値実験を解析することで、物理環境など、海洋物質循環の状況を決定している各要素の再現性についての検討をさらに進める。具体的には、底層水班と連携して南大洋における底層水形成や海氷分布といった物理過程を、生態系班と連携して南大洋での生物ポンプ過程を検討する。 (氷床・固体地球間)南極氷床モデル結果でを入力に固体地球モデルを動かし、観測と比較する。相互作用の効果を調べるための氷床と固体地球結合モデルの開発を継続する。気候モデルや高解像度海洋モデルから示される棚氷質量収支を入力として退氷期の南極氷床の再現を行う。
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