本年度は、膵がんのゼノグラフトモデルを用いて我々が新規に開発している薬剤を投与した時の腫瘍組織中の免疫細胞の変化をscRNA-seqにより解析した。また、1細胞解析用の解析パイプラインを整備した。 1) scRNA-seq、scATAC-seqおよびCyTOFのための解析基盤の検討:これまでに構築した解析パイプラインを基盤にして、scRNA-seqの新しい解析手法を論文として報告した(中戸研究室(東京大学定量生命科学研究所)との共同研究)(Nucleo Acids Res 2021)。また、CyTOFの解析パイプラインを構築し、scRNA-seqやscATAC-seqとの統合的な解析基盤を確立した。 2) ゼノグラフトモデルを対象とした1細胞解析:前年度に見出した特定のリンパ系の細胞の活性・浸潤を制御するマクロファージに着目して解析を進めた。膵臓がんのゼノグラフトモデルに我々が新規に開発している薬剤を投与し、形成された腫瘍中の免疫細胞をscRNA-seqにより解析したところ、当該マクロファージが減少し、特定のリンパ系の細胞の腫瘍内への浸潤が抑制されることが明らかになった。さらに、当該マクロファージでは特定のリンパ系の細胞の活性。浸潤を制御する因子の発現量も変化していた。また、薬剤投与によってインターフェロンγシグナルが亢進する、好中球が増加するなど腫瘍中の免疫細胞が抗腫瘍的に変化していることを見出した。前年度に準備したCyTOF抗体パネルを用いて予備実験を行ったところ、上記のscRNA-seqの解析で見いだされた腫瘍中の免疫細胞の変化を検出、確認することができた。
|