計画研究
1) 脳腫瘍幹細胞の分化と多様性誘導の分子機構: PRRX1はBMP-4の刺激によって脳腫瘍幹細胞で発現が上昇することがRNA-seqによって確認された。PRRX1のshRNAを用いたノックダウンにより脳腫瘍幹細胞はBMP-4存在下でも分化せず、 CD133 (PROM1) 陽性の幹細胞の増加が見られた。PRRX1はPROM1遺伝子のプロモーター領域に直接結合してCD133の発現を制御していることが確認できた。マウス脳内同所性移植により、PRRX1をノックダウンした脳腫瘍細胞は造腫瘍能が亢進し、マウスの生存期間は短縮することが明らかとなった。2) 各種がん細胞由来のがん幹細胞の比較と多様性誘導機構の解析: マウス膵臓への同所性移植で得られた細胞株が幹細胞様特質を特徴的に発現することから、その分子メカニズムの解析をクローン化した細胞を用いて行った。その結果、膵臓組織での生存や増殖に適した細胞が「選択」されるだけでなく、膵臓組織の微小環境から何らかのシグナルが入ることで「教育」が起こっていると考えられた。また腎臓への同所性移植により腎臓がん細胞株を樹立し、膵臓への同所性移植と同様に、特徴的な形質を発現することが明らかとなった。3) マウスES細胞のBMPによる分化と多様性誘導機構: ES細胞におけるSmadのゲノム上の局在をChIP-seqで検討した結果、エンハンサー領域以外にもSmadの結合が認められた。ヘテロクロマチン形成に関係した因子をSmad1との相互作用の有無でスクリーニングした結果、Smadと結合するヒストン脱メチル化酵素を同定した。この因子が発現抑制に関係する転写産物に関して、Smadが存在することで発現誘導されることをトランスクリプトームデータの再解析で確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した研究はすべて順調に進行している。組織透明化の技術は共同研究の要望も多いことから、とくにがん研究分野での共同研究を推進した。各種がん細胞由来のがん幹細胞の比較と多様性誘導機構の解析では膵臓がんに加えて、腎臓がんを腎臓へ同所性に移植することで悪性度の高い腎臓がん細胞株を樹立することができた。膵臓がんとの比較で、がん微小環境の影響を観察する上で興味深いモデルとなると期待される。マウスES細胞のBMPによる分化と多様性誘導機構ではBMP-Smad経路の新たな標的遺伝子を同定したことからその機能について解析を行う。当該標的遺伝子は、特に心血管系での発現が認められたため、BMPシグナルが関係する2つの遺伝性血管疾患(遺伝性出血性毛細血管拡張症と肺高血圧症)に関係するか否かを中心にノックアウトマウスの解析を行う。
当初の計画に沿って順調に研究が進行している。組織透明化の技術は、領域内での共同研究の要望も多いことから今後も連携を密に取りつつ推進する予定である。数理モデルによる解析が領域内で活発に議論されており、本研究でもいくつかの研究項目について研究を開始したい。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
Oncogene
巻: - ページ: 印刷中
10.1038/s41388-018-0144-0
International Journal of Cancer
巻: 142 ページ: 1627~1639
10.1002/ijc.31179
http://beta-lab.umin.ac.jp
http://cdiversity.umin.jp/index.html