計画研究
1) 脳腫瘍幹細胞(GIC)の分化と多様性誘導の分子機構:BMPによるGICの分化誘導に重要な分子としてチロシンキナーゼ型受容体EPHA6を同定した。EPHA6はBMP刺激で間接的にリン酸化が増強した。EPHA6の発現が高い脳腫瘍患者は低い患者に比べて予後が良かった。EPHA6はBMPのI型受容体ALK-2と複合体を作り、このことがBMPによるGICの細胞死の増強作用に関与していると考えられた。2) 同所性移植を用いた各種がん細胞由来の高悪性細胞の解析:マウス膵臓がん細胞を野生型や免疫不全マウスに移植して高悪性株を樹立、悪性化に関わる分子の解析を進めた。腎細胞がん細胞の同所性移植株では腫瘍内在性炎症が増悪し肺転移が見られた。腫瘍内在性炎症を担う転写制御機構としてスーパーエンハンサー(SE)形成が関与して複数のケモカインの発現が上昇することが重要と考えられた。SEの構成分子BRD4を標的としたBET阻害剤の投与によりケモカインの発現が減少し肺転移が抑制された。3) ES細胞および肺血管内皮細胞のBMPによる分化と多様性誘導機構:マウスES細胞分化に関わるエピジェネティック因子について、MERVL、Zscan4遺伝子の発現とSmadとの結合を指標にスクリーニングを行い、ヒストン脱メチル化酵素Kdm1aを同定した。Kdm1aはMERVL/Zscan4の発現を抑制することから、Smad1がKdm1aを阻害する働きがあることが示唆された。また、前年度までに肺高血圧症に関わる遺伝子としてATOH8を同定し、HIF2alphaの作用の抑制、血管内皮細胞の生存亢進の重要性を明らかにし、成果の取りまとめを行った。4) 組織透明化によるマクロから1細胞レベルでの細胞ダイバーシティーの検討:組織透明化手法により、血管・リンパ管を臓器・組織レベルで解析し、さらに数理解析による画像の定量化を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題は当初計画した研究はすべて順調に進行している。今年度はインパクトの高い論文を一流誌に発表し、プレスリリースを行うなど、当初の計画を超えた成果を得ることができた。組織透明化技術については領域内外で共同研究の要望が多いことから、引き続き共同研究を進めるとともに、本領域の研究目標の一つである数理解析手法を積極的にとりいれ、透明化技術による解析結果を数理モデルで解析し、より客観的に結果を解析する手法の開発に努めている。本研究領域では若手研究者の育成・国際交流が進められ、本研究課題でも多くの若手研究者が成果をあげた。脳腫瘍の研究では田邉諒(2019年度より特任研究員)が東京大学生命科学シンポジウム(2019年)でポスター賞を受賞した。
当初の計画に沿って今後も研究を進める。透明化技術については、引き続き本新学術領域の他のグループとの連携で細胞ダイバーシティーの分子機構の解明に貢献する。透明化技術は数理解析によって客観的な解析を行うことが可能となると考えており、総括班とも連携しながら研究を進める。本研究の研究成果は今後も英文雑誌に可能な限りopen accessとして発表することで、成果を広く共有する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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http://beta-lab.umin.ac.jp
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