研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
17H06326
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮園 浩平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (90209908)
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研究分担者 |
鯉沼 代造 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (80375071)
江幡 正悟 東京大学, 環境安全研究センター, 准教授 (90506726)
森川 真大 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (80775833)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 発生・分化 / シグナル伝達 / 癌 |
研究実績の概要 |
1) 脳腫瘍幹細胞におけるBMP標的分子としてサイトカイン受容体TNFRSF14 (HVEM)を同定した。TNFRSF14のリガンドを同定し、TNFRSF14が脳腫瘍細胞のオートクラインの増殖制御作用を有することを明らかにした。アルパカでヒトTNFRSF14抗体を作成してその改良を行い、抗体のin vitroおよびin vivoでの働きなどの確認を進めている。 2) 同所性移植で樹立したヒト膵がん細胞高悪性株に特異的に発現するタンパク質としてNTSR1を同定した。NTSR1は膵臓がんの予後と関連し、in vivoで腫瘍形成や転移能に関与していた。NTSR1はニューロテンシンに結合してMAPKやNFκBシグナルを活性化し、NTSR1の拮抗薬はin vivoで腫瘍形成を抑制した。同所性移植で得らたヒト腎細胞がん細胞はUQCRH遺伝子の発現低下を介して細胞死に影響を与えることが明らかとなった。 3) マウスES細胞の多様性を検討する際に、BMPと同じTGF-βファミリーの因子であるアクチビンの関与の検討が必要となった。アクチビンに選択性の高い阻害剤としてリガンドトラップの阻害剤FSTL3-Fcを開発した。この阻害剤は、アクチビンに加えてES細胞の機能には関係しないGDF-8/11に選択性が高く、BMPを含む他のTGF-βファミリーのリガンドには結合しなかった。FSTL3-Fc存在下でのBMPシグナルに関する解析を施行予定である。一方、GDF-8は骨格筋肥大を負に制御する因子であることから、FSTL3-Fcの投与によりマウスの全身の骨格筋肥大を誘導することを見出したため成果の取りまとめを行った。 4) 組織透明化技術により観察されるマウスのリンパ管および血管の3次元構造の生理的また病理学的変化について、数理科学的手法による新たな評価系を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は当初計画した研究は順調に進行し、さらに当初予定していなかった成果が得られている。組織透明化技術については実験手技を広く共有するためにプロトコールを詳細に記載した論文を発表し、領域内外で共同研究を進めた。また本領域の研究目標の一つである数理解析手法をとりいれ、透明化技術による解析結果を数理モデルで解析している。 マウスES細胞のBMPによる分化と多様性誘導機構の研究の過程で、FSTL3がアクチビンだけでなくGDF-8/11にも作用することを見出し、骨格筋の肥大を誘導するという興味深い成果を得たので成果の取りまとめを行った。 本研究領域では若手研究者の育成・国際交流が進められ、本研究課題でも多くの若手研究者が成果をあげた。連携研究者の高橋恵生は日本がん転移学会、日本分子標的治療学会の研究奨励賞を受賞し、数理科学研究に関するシンポジウムで招待講演をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
組織透明化技術については、引き続き解析技術を本新学術領域の他のグループと共有し、細胞ダイバーシティーの分子機構の解明に貢献する。透明化技術の数理解析について、引き続き総括班と連携しながら研究を進める。 FSTL3の研究は高齢社会における問題であるサルコペニアなどの治療に応用できる可能性があることから更なる研究を続ける。 これまでと同様に本研究の研究成果は今後も英文雑誌に可能な限りopen accessとして発表することで、成果を広く共有する。
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