研究実績の概要 |
(1)疎なscRNA-seqデータに対して頑健に遺伝子共発現ネットワークを構築・比較する新規手法 ”EEISP”を開発した [Nakajima N, et al., 2021.]。本手法を本領域・秋山班によって樹立されたヒト膠芽腫幹細胞データに適用し、血清刺激前後において共発現・排他発現パターンが変動する遺伝子群を網羅的に同定することで、従来法では見つけられなかった新規の膠芽腫幹細胞マーカー遺伝子候補を複数同定した。 (2)ゲノム立体構造情報を網羅的に得ることができる強力な手法であるHi-Cデータを入力とし、様々な特徴量を抽出可能な新規手法”HiC1Dmetrics”を開発した[Wang and Nakato, 2021]。本手法は主成分やインシュレーションスコアなど既存の特徴量に加え、Stripe TAD、クロマチンハブ等の特殊な構造を抽出可能な新規手法も提案している。本手法は一般公開されており、誰でも利用可能である(https://h1d.readthedocs.io/en/latest/index.html)。 (3)マウス肝臓類洞細胞の線維化・回復プロセスを対象にした3万4千細胞から成る大規模なシングルセル時系列データを取得し、解析を行った。その結果、線維化から回復期にかけて機能するマーカー遺伝子候補を複数同定した。細胞間相互作用解析により、この遺伝子群が作用する細胞種を同定した。本成果を第44回日本分子生物学会年会にて口頭発表した。 (4)シングルセル軌道解析系として、心疾患モデルiPS細胞と健常細胞をそれぞれ心筋細胞に分化させる系を確立し、心筋前駆細胞の時点でのシングルセルデータを取得し解析を行った。その結果、疾患由来細胞特異的な細胞群を同定した。さらなる詳細な軌道解析を行うべく、現在データの追加と解析プロトコルの検証を進めている。
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