研究領域 | 細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
17H06333
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
八尾 良司 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 部長 (80291095)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 三次元培養オルガノイド / 遺伝子改変マウス / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、当該領域研究により明らかにされる細胞社会ダイバーシティーの制御に関わる新たなパスウェイや分子、さらにそれらの解析をもとに構築される数理モデルにより同定されるキー分子を解析対象として、そ れらを変化させた時の細胞多様性の変化を、3次元培養オルガノイドや生体組織レベルで解析する。 消化管組織は、陰窩底部に存在する幹細胞ニッチにおいて、消化管幹細胞の自己複製と細胞分化のプログラムが厳密に制御されている。しかし、Apc遺伝子に不活性化変異が導入されると、Wntシグナルが過剰に活性化し、この変化が消化管腫瘍の初期病変であることが知られている。 平成29年度は、これらの解析を行う技術開発のために、コンディショナルApc遺伝子変異をもつ消化管腫瘍モデルマウスのゲノム編集による遺伝子改変を行なった。具体的には、近年開発された超過排卵技術により大量のApc遺伝子ホモ変異受精卵を作成、CRISPR/Cas9法による追加遺伝子変異導入を行なった。その結果、biallelicに目的の変異が導入されたマウスの取得に成功した。 一方、in vitroでの細胞生物学的な検証実験を行うプラットフォームの構築を目的として、消化管腫瘍モデルマウスから3次元培養オルガノイドを樹立した。これらはCreERT2を発現しており、タモキシフェン暴露によりin vitroでApc遺伝子に変異が導入されることを確認した。さらに、3次元培養オルガノイドのゲノム編集による遺伝子改変を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消化管腫瘍モデルマウスのゲノム編集が予想以上に効率的であり、また三次元培養オルガノイドの樹立とin vitroでの遺伝子変異導入実験系の確立という所期の目標は、計画以上に進展している。 同所移植・イメージング実験を行う予定であったが、必要な機材の仕様変更にともない、予定していた実験ができなくなったため、新たな遺伝子改変を進めている。幸い追加遺伝子変異が順調に進み、大きな遅れにはならない見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
消化管腫瘍では、Apc遺伝子変異によりadenomaが発生し、さらに複数の遺伝子変異が蓄積することにより腫瘍が進展する。ヒト大腸がんではApc遺伝子変異導入後、比較的早い段階でKras遺伝子の活性型変異が生じるとされている。しかしこれらの変異蓄積により、消化管組織の細胞ダイバーシティーがどのように変化するのかについては、十分に理解されていない。 本研究課題では、Apc遺伝子変異に加え、Kras遺伝子変異による細胞ダイバーシティーの変化を検討する。具体的には、すでに樹立されたApc遺伝子単独変異に加え、Kras遺伝子単独、およびApc/Kras遺伝子二重変異マウスを作製し、個体レベルの解析を行う。さらにそれぞれの遺伝子改変マウスから、3次元培養オルガノイドを樹立し、in vitroでの解析を行う。 これら一連の遺伝子改変マウスおよび三次元培養オルガノイドを用いて、消化管腫瘍の鍵となる遺伝子変異に伴う細胞ダイバーシティーの変化を解析するとともに、本領域研究で明らかにされる分子機構や数理モデルの実証実験を行うための研究リソースの整備を行う。
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