研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
17H06344
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡邊 克巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20373409)
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研究分担者 |
大塚 由美子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20757645)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 顔 / 身体 / 文化 |
研究実績の概要 |
多様な人々が集い、異なる文化が交錯するトランスカルチャー状況にある現代社会において、顔と身体表現の差異と普遍性とを明らかにすることは、異文化理解とコミュニケーションの観点から特に重要である。これまで、人間は明示的には気付いていなくとも、微細な差を無意識に検出して行動を変容させることが、単純な画像刺激や意思決定を対象として示されてきたが、顔と身体表現という人間にとって真に重要な情報について、どのように無意識的な潜在処理がなされるかは明らかでない。本計画班では、顔と身体表現の文化差と個人差に注目して、顔認知の予測・記憶・選好に関する認知ストラテジーとダイナミクスを顕在過程・潜在過程の観点から実証的に解明する。この2つの過程は、顔認知の障害においては、顕在過程に問題があるため人物同定できない相貌失認と、潜在過程に問題があり親しい人物が偽物に感じられるカプグラ症候群という特異的な症状で現れるが、本計画班では、これらの認知様式の連続性(スペクトラム)と普遍性・多様性・ダイナミクスをあぶり出し、行動実験、眼球運動、皮膚電位(SCR)、機能的脳イメージングを用いてそのメカニズムを調べる。初年度は特に主観印象を操作できる顔構造統計モデルの構築と社会適応に関わる顔身体認知の社会・文化による影響などについて着実に研究を進めるとともに、海外の共同研究者との研究体制構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は研究開始が年度途中であったこともあり、予定していた若手研究者の雇用がかなわなかったが、分担研究者と研究協力者の協力を得て、計画通りに進めるよう努力している他、次年度では若手研究者を雇用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本計画研究では、心理学・認知科学・脳科学の観点から、事前期待から始まり、知覚から記憶に至るまでのプロセス解明の観点から「顔・身体学」の学術領域に寄与するため、スイスやオーストラリアの研究者と共同で、顔身体表現の文化差や個人差のプロセスやダイナミクスを“顕在処理過程”と“潜在処理過程”から解明する試みを行う。手法としては、他の研究班とも連携しながら、行動実験と眼球運動計測を中心に置き、皮膚電位(SCR)や脳波(EEG/ERP)も用いて研究を進める。 顔や身体表現はその背景の社会文化を反映するものであり、このようなダイナミクスや時間依存性のデータを元に、顔や身体表現からそれぞれの文化や社会についても人文科学的分野にも貢献するような知見を蓄積し、多角的に検討する。【顔の知覚における潜在的・顕在的ダイナミクスの研究】【顔の知覚・記憶の普遍性に関する研究】【顔の知覚における事前予測(期待)の研究】の3つの研究テーマに関してそれぞれ2つのサブテーマを設定し、それらを有機的に組み合わせることで、顔処理の顕在的処理・潜在的処理のダイナミクスの解明を進める。 次年度では若手研究者を雇用してさらに研究を進展させる予定である。
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