研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
17H06346
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
河野 哲也 立教大学, 文学部, 教授 (60384715)
|
研究分担者 |
小手川 正二郎 國學院大學, 文学部, 准教授 (30728142)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 顔身体学 / トランスカルチャー / 比較現象学 / 身体性認知科学 / 身体運動 / ミックスレイス / サイエンスカフェ |
研究実績の概要 |
本研究の3年目として、領域全体と連携しつつ、以下の4つの研究・事業を行った。 1)顔身体学の現象学的理論化: 新学術領域「顔身体学」の理論的な基盤を整理し体系化するため、河野と小手川が『顔身体ハンドブック』(東大出版会)の編集を共同で行った。19年度末で約7割の原稿が集められたので、20年度中に出版する。 2)身体の比較現象学の確立: 身体性認知科学・哲学の専門家であるアントニー・チェメロ氏(シンシナティ大学)を、身体性認知哲学で澄明なジャン・ミッシェル・ロワ氏(リヨン高等師範学校)を、心の哲学を専門とするジン・ヒー氏(華東師範大学)をはじめ数名の研究者を招聘し、公募班の長滝祥司氏を含め多数の研究者が参加した「Radical Embodied Cognition」と関連ワークショップを開催した。また、顔と身体の神経生理学を専門とするJ.Cole氏を9月に英国から招聘し、稲原美苗氏(神戸大)、マイケル・ペキット氏(阪大)、河野とともに日本心理学会での公募シンポジウム、茂木健一郎氏と河野とともに日本顔学会で学会企画サテライト・シンポジウムを実施し、神経病理学的な立場から顔身体表現の意味を多角的に論じた。 3)身体表現の制度化の比較現象学: 小手川が中心となり、2020年2月に国内外の哲学・人類学・心理学の研究者を招いて、「ミックスレイスの顔身体表象:学際的研究を目指して」と題するシンポジウムを企画したが、新型コロナウィルスの感染拡大をうけて来年度に延期となった。 4)顔身体カフェの実施: 2019年12月に領域会議と合わせて領域代表の山口真美氏を提題者として顔身体カフェ「自分の顔が好きですか?顔を知ろう」をジュンク堂書店那覇店にて実施し、20名ほどの参加者があった。2月に田中章浩氏の心理学計画班とともに日本科学未来館で実施予定だった顔身体カフェは延期となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、2月までは全て順調に推移し、計画していたシンポジウムやハンドブックの作成、顔身体カフェをすべて成功裏に実施でき、領域会議や例会、あるいはそれらの実施運営などにも本計画班は大きく貢献した。しかし、2月以降の新型コロナウィルスの感染拡大により、2-3月に企画していた「ミックスレイスの顔身体表象」シンポジウム、日本科学未来館での顔身体カフェ、あるいは領域全体でのインドネシアでのシンポジウムもすべて延期ないし中止となった。社会的距離をとる予防措置により研究会や例会も開催できなくなったが、ネットを使った会議やシンポジウムに移行する努力をした。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の4年目としては、領域全体と連携しつつ、以下の5つの研究・事業を行っていく予定である。 1)顔身体学の現象学的理論化: 事典的な共著として『顔身体ハンドブック』(東大出版会)の編集を河野と小手川が共同で行い、今年度出版する。2)顔身体学国際誌の発刊の準備: 哲学と心理学、文化人類学を中心とした学際的な国際誌『哲学と文化的身体性』(仮題)を発刊する準備作業を行う。これまでの本国際研究会で発表された論文をまとめた「創刊準備号」を年度内か、来年度始めに発刊する。来年度以降の創刊に向けて海外から研究者を招聘し、打ち合わせと研究会を行う。3)顔身体運動のビデオ映像分析・評価方法の展開: ビデオ録画された顔身体の運動やパフォーマンス(対話、スポーツ、芸術)をアーカイブ化し、昨年度までに開発した共有コミュニケーションで相互的・遠隔的に評価する映像分析・評価方法を発展させ、顔身体学の方法論として提示する。4)身体表現の制度化の比較現象学: 昨年度から引き続いて、人種をめぐる顔身体認知についての現象学的研究、それに基づいた人類学班と心理学班との共同研究を進め、国内外の研究者たちを集めた日本におけるミックスレイスの顔身体表象に関するシンポジウム、顔身体の社会的認知において影響を及ぼしているルッキズム(外見至上主義)についてのシンポジウムを21年2月ないし3月に開催する。5)顔身体カフェの実施: 領域全体のアウトリーチ活動として、河野が「顔身体カフェ」を2~3回実施する。 ただし、これらの計画についても新型コロナウィルス感染の状況に左右される可能性がある。感染拡大の影響を比較的受けにくい1)~3)を精力的に進め、シンポジウムや研究会に関しては、感染の状況次第で、対面型からオンラインに切り替えて実施する予定である。
|