研究実績の概要 |
サイトカイニンは、オーキシンと並んで植物の成長を制御する重要な植物ホルモンである。特に茎頂や根端の分裂組織の形成と維持に関わることが知られている。農業利用としては、温州みかんやリンゴの側芽の生長促進に用いられる。また、稲穂の分岐と穀粒形成に関連していることから、サイトカイニンシグナルの人工調節は穀物生産への応用も期待される。一方、サイトカイニンを過剰に投与すると植物の生長に異常をきたすため、器官特異的に受容を制御する技術の開発が望まれている。 サイトカイニンの受容体はキナーゼ活性をもつ膜タンパク質で、シロイヌナズナで3種類(AHK2, AHK3, AHK4)のホモログが見つかっている。このうちAHK4について、サイトカイニンとの複合体の結晶構造解析が為されている(Hothon et al, 2011)。AHK4の構造変化を伴う複合体形成において、アスパラギン酸(D262)ーサイトカイニンーロイシン(L284)の水素結合ネットワークが重要であることがわかっている。本研究では、このネットワーク損なわないように、新たなリガンドー受容体ペアを設計した。具体的にはバリン(V248)をグリシンに改変することで受容体のポケットを拡大し、この空間を埋めるようサイトカイニンに置換基を導入した。その結果、大腸菌を用いたアッセイ系において、設計した人工サイトカイニンと改変受容体のペアが機能することが確かめられた。
|