計画研究
ヒト脳腫瘍検体を対象に、クロマチン免疫沈降シークエンス, RNAシークエンス, 全ゲノムシークエンスを行い、A01,A02班と共同し、悪性脳腫瘍形成に関わるスーパーエンハンサー異常と遺伝子発現異常を定量し解析した。その後、腫瘍形成過程における新規ゲノム異常の解析を行い、個体レベルでの腫瘍形成に対する影響の評価をし、A01班と共同し標的となる分子に対する創薬につなげた。具体的には、in vitro研究にて各種遺伝子操作によるスーパーエンハンサー異常の解析、腫瘍形成過程におけるRNA異常の変化の解析、腫瘍形成過程における全ゲノム異常の変化の解析を行い、ヒト悪性脳腫瘍検体との比較個体レベルとヒト悪性脳腫瘍検体での評価および治療標的として候補となるゲノム、エピゲノム異常を見いだした。腫瘍細胞にH3K4me抗体とH3K27Ac抗体でChip-Seqをすることでスーパーエンハンサーによる転写遺伝子、ヒストン修飾の変化を次世代シーケンサーにて網羅的に評価し、RNA-Seqの結果と比較しスーパーエンハンサー結合の意義を検討した。これまでの我々の検討では、次世代シーケンサーのpeak callの数に対してタグのカウントをプロットし、傾き1の接線よりも上位をスーパーエンハンサーと定義されているが、理論的な裏付けがない。そこで物理・計算化学を行っているA02班と共同し、論理的にスーパーエンハンサーを同定した。また、腫瘍形成過程におけるゲノム異常と発現の変化の解析するために、腫瘍形成前後にて新たなゲノム異常が出現しているかどうか全ゲノムシーケンスとRNAシークエンスを行い確認した。
2: おおむね順調に進展している
かなり多くのデータが集積でき、2編の査読ありの英文国際誌に投稿中である。うち、ひとつは改訂中であり、もうひとつは、初稿を投稿したばかりである。インパクトの高いジャーナルに掲載できると期待される。
ヒト悪性脳腫瘍におけるスーパーエンハンサー解析を行う。しかし、これまでの予備検討では臨床検体は、細胞株に比べてピークのノイズが多いことがわかっている。A02班と共同し、数学的にノイズを除去し、真のピークを同定する。しかし、それでもヒトの検体でうまく行かない場合は、マウスでの自然発生脳腫瘍モデル(MADM)を用いて、マウス脳腫瘍からエンハンサーを絞り込み、ヒトへアプローチするように計画を変更する。すでに約150日間かけて神経膠腫grade IIからgrade IV相当に自然に悪性・進展化する遺伝子改変マウスモデルを用いた研究を開始している。このマウスモデルはMADM(Mosaic Analysis with Double Marker system)システムと呼ばれる極めて有用なシステムのもとに腫瘍を形成する(Zong H et al. Cell, 2011)。コンディショナルノックアウトシステムにより、一部の神経幹細胞にp53とNf1の両アレル性の欠失が起こりその細胞はGFP陽性となり、増殖能力を獲得し悪性脳腫瘍を形成する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
World Neurosurg.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.wneu.2018.04.053.
doi: 10.1016/j.wneu.2018.03.112.
Cancer Sci.
doi: 10.1111/cas.13580.
J Neurooncol.
doi: 10.1007/s11060-018-2831-7.
Brain Tumor Pathol.
doi: 10.1007/s10014-018-0312-5.