研究領域 | 重力波物理学・天文学:創世記 |
研究課題/領域番号 |
17H06359
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向山 信治 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (40396809)
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研究分担者 |
前田 恵一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70199610)
浅田 秀樹 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50301023)
須山 輝明 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20456198)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙論 / 初期宇宙 / 量子重力 |
研究実績の概要 |
向山(代表)と本橋(連携)は、constant-roll inflationによる原始ブラックホールの生成を調べ、LIGO-Virgoの観測結果を説明できる可能性について議論した。前田(分担)は、階層的三体系からの重力波観測の可能性について調べ、三体系に特徴的な古在・リドフ振動によるパルサーの近星点移動曲線の屈折を予言した。浅田(分担)は、aLIGO, VirgoにKAGRAを加えた4台での重力波観測体制で初めて可能となる重力理論の検証法を提案し、4台でも偏波を分離して測定可能となる条件を発見した。須山(分担)は、原始ブラックホールを特徴づける観測量(具体的には、原始ブラックホールの空間分布、自転角運動量、質量関数)を原始密度揺らぎから導出するための理論的解析や定式化を行なった。山本(連携)は、カメレオン機構をもつ修正重力理論における中性子星の構造について、修正重力による質量と半径の関係へ影響と熱的進化の振る舞いを調べ、単独中性子星の速い冷却を導く可能性を見言い出した。樽家(連携)は、銀河・ダークマターハローが持つ固有アライメント(intrinsic alignment)の空間相関に着目して、新しい宇宙論的手法の開拓を進め、ダークエネルギーの状態方程式、もしくは加速膨張をより強く制限できることを示した。小林(連携)は、重力波観測からの制限を満たす修正重力理論に対し、密度揺らぎの進化や、太陽系内の実験や連星パルサーの観測から与えられる制限について考察した。重森(連携)は、弦理論における重要なブラックホールであるD1-D5-Pブラックホールの微視的状態を表す超重力解であるSuperstratum解のうち、3次元球面に基づいたものの個数を数え、それがブラックホールのエントロピーを再現するのに不十分であることをあらわに示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
40編の論文を査読付き学術雑誌に出版し、国際会議や研究会で研究発表を50回行なった。「研究実績の概要」で記述したように、学術的価値の高い研究を数多く行い、重力波観測が重力理論の発展を促す可能性、そして理論予言がさらなる実験の発展の動機付けとなる可能性を追求した。したがって、本研究はおおむね順調にしてんしていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、重力理論の検証に向け、天文学的・宇宙論的観点からの重力波の研究を総合的に推進するものである。当然全体として統一感をもって研究に臨むべきであるが、それと同時に、個々の研究に高い質が求められる。そこで、個々の研究の効率を最適化するため、本年度同様に、全体を A) 拡張重力理論に基づく宇宙シナリオの重力波による検証可能性; B) 拡張重力理論におけるコンパクト天体と重力波; C) 相対論的な強重力場での天体の運動と重力波生成・伝播; D) ブラックホール周りの粒子のカオス的運動など、相対論的力学系からの重力波; E) 重力波の伝搬に関する理論模型の探求と観測との比較による制限; F) インフレーション宇宙論の重力波物理としての側面; G) インフレーション後の再加熱過程における重力波の生成; H) レーザー干渉計やパルサータイミングを用いて背景重力波を検出する方法論; I) 原始ブラックホールの連星が放出する重力波; J) ブラックホールの微視的構造の理論的解明; K) 超弦理論などの量子重力理論に基づく宇宙論シナリオと重力波 の 11 課題に分類し、それぞれについて研究を遂行する。
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