計画研究
本年度は、まず、データ解析に関する研究において、初年度に購入した重力波観測データ解析用計算機上に構築した超新星爆発からの重力波などの突発性重力波検出用の重力波探査用解析ソフトウェアを用いて、2020年2月から2020年4月にわたって行われたLIGOとVirgo、KAGRAによる共同観測で得られたデータの解析を行った。その中で特に、突発性重力波の探査について国際共同観測チームをリードして、解析を進めた。観測結果を論文にする上でも中心となって進めている。また、超新星重力波の円偏光についての検出可能性に関して、世界の独立したグループが行った3Dシミュレーションで得られた様々な重力波形に対して調べ、モデルには寄るが、コアの回転を持つモデルに関しては5kpc程度まで検出できることを示し、論文を投稿し、現在査読中である。また、前年度より準備されていた観測データの本研究のバースト解析サーバへの連続送信を稼働させた。国際観測網のデータを10秒前後の遅延時間で受信した。ラプラス変換を利用した短時間遷移信号の解析フィルタを開発し、重力波波形に対する基本的な挙動の評価も行った。理論研究のハイライトとしては、20太陽質量をもつ大質量星の空間3次元の一般相対論的磁気流体シミュレーションを行い、ニュートリノ加熱とともにコアの高速自転によって増幅された磁場が爆発を後押しする、磁気駆動爆発が起こることを示した。ジェット状の爆発に伴い、いわゆるメモリー効果を伴う重力波波形が生成されることを突き止め、現在、論文として発表準備中である。昨年度から引き続き星震学の線形解析法を原始中性子星に適応する手法を開発し、本年度は3本の論文で重力波のモードの擬交差を利用したモード同定について、流体計算の次元が重力波の周波数を変えるか、一般相対論的なメトリック摂動の自由度が重力波の周波数を変えるかなどについて詳しく調べた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、これまで開発を行ってきた超新星重力波の検出に向けたデータ解析用ソフトウェアを用い、2020年2月から2020年4月にわたって行われたLIGO、Virgo、KAGRAの試験観測のデータを用いて、実際のデータ解析を行うことができたことが進捗である。また、超新星重力波の円偏光についての検出可能性に関して、世界の独立した超新星研究グループが行った3Dシミュレーションで得られた様々な重力波波形を世界に先駆けて網羅的に調べ、その観測可能性を精査できたのも成果である。また、ラプラス変換を利用した短時間遷移信号の解析フィルタを開発し、重力波波形に対する基本的な挙動の評価も行うこともできた。理論研究においては、これまで特に「磁場」を含めた一般相対論的なニュートリノ輻射流体シミュレーションにおいては、その計算コストの高さから、ニュートリノ輸送法においてエネルギー方向に積分した、グレイ近似を用いたものが主流であった。この人為的な仮定のため、自転・磁場を伴い高速自転星の重力崩壊並びに、爆発に伴うニュートリノや重力波放射の定量的予測を難しくしていた。今回、フルに空間3次元でさらに、詳細なニュートリノ反応を含む自転磁場コアコラプスの計算を行うことで、非軸対称モードの長時間進化を明らかにすることが出来たのが大きな成果である。一般相対論的な磁気流体計算とセルフコンシステントなニュートリノ輻射輸送計算を両立したシミュレーションを行うことは、原始中性子星進化を定量的に正確に追うために不可欠であった。その意味で、本成果は、着実な数値コード開発の結果得られた成果であり、本研究計画が順調に進展していることを示すものである。
これまで、超新星重力波の時間・周波数空間における特徴を明瞭に引き出す手法としてウィグナー・ビレ法、ならびに、ヒルベルトファン法を含むいくつかの新しい解析法の構築を行ってきた。本年度は、特に自転、磁場を伴う超新星爆発モデルから得られた重力波波形に対してこれらの解析を行い、重力波シグナルから、星の自転、磁場に関する情報に如何に迫れるか、詳しく調べる計画である。特に、重力崩壊直前のコアが高速自転さらには磁場を有する大質量星は、超高輝度超新星爆発や強磁場中性子星形成との関連が示唆され、そのダイナミクスを重力波から読み解くことは重要である。親星の質量を11から60太陽質量まで広く選び、系統的な3D超新星シミュレーションを行うことで、重力波・ニュートリノシグナルのカタログを作成し、その観測可能性を精査していく計画である。特に、LESA(自己維持的なレプトン放射非対称性)と呼ばれるニュートリノシグナルの時間変調現象が、近年の超新星理論の中で新たな謎として、その物理的機構を明らかにすることが焦眉の課題となっている。3D超新星モデルにおいて、特に、原始中性子星の対流現象を解析することで、LESAの謎に迫れると睨んでいる。この現象に関しても、重力波シグナルとの相関も含め、定量的に明らかにしていく計画である。これまでの研究で、超新星爆発時に、コアが早く自転している場合、もしくはSASIと呼ばれる非軸対称モードが成長する時、超新星重力波が円偏光成分を持つことを指摘することが出来た。本年度は、自転に加え、磁場が加わった時に、円偏光成分が定量的にどのように変わるか、定量的に調べていく。また、上述の、系統的3D超新星モデルに対しても、投網式に、重力波円偏光の観測可能性、そこから得られる超新星爆発の物理について、詳しく調べ、その成果を論文としてまとめる計画である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 13件、 査読あり 19件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 17件、 招待講演 5件)
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