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2018 年度 実績報告書

脊椎動物の筋骨格系の形態進化に見る制約と方向性

計画研究

研究領域進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~
研究課題/領域番号 17H06385
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

倉谷 滋  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00178089)

研究分担者 PASCUAL JUAN  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30594098)
平沢 達矢  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60585793)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2022-03-31
キーワード脊椎動物 / 発生 / 進化 / 骨格筋 / 腱
研究実績の概要

進化上、筋-骨格結合が変化した際、発生過程のどの部分が変化したものなのかについて解析をさらに進めた。前年度までに、他の羊膜類の胸筋と異なり、カメの胸筋が腱前駆細胞を介在させず腹甲の真皮に結合したのち、その真皮中で発生、成長する腹甲骨格へ二次的に付着すること、真皮と結合する筋芽細胞がFat1プロトカドヘリンを細胞膜に持つ真皮細胞に沿って移動するという、特異な現象を見出した。2018年度の組織学的観察および遺伝子発現解析では、羊膜類および両生類の舌筋も同様の発生過程で舌粘膜との結合を樹立することを確認した。つまり、多くの場合、筋-骨格結合の新規パターンは腱前駆細胞との相互作用の解除とFat1を介した筋芽細胞移動を伴って獲得されたものであり、それは四肢動物の初期進化までに成立していたらしい。
同時に、骨格筋の分化過程のうち筋-骨格結合や筋膜の分化に注目した精密観察と、異所的な筋前駆細胞がどうふるまうかを調べる実験を通し、発生上の揺らぎの大きさを左右する要因、発生機構のどこが動かし難くどこが揺らぎやすいかを探る研究を進めた。前者については、円口類を含む脊椎動物胚を対象にし、主に鰓下筋群と外眼筋および結合する腱の発生過程を解析、遺伝子発現や細胞系譜、分化タイミングについて個々の筋の差異を突き止めつつある。後者については、ニワトリ胚で胸骨を除去した場合に、胸筋の筋芽細胞がどのようにふるまうかを調べる実験を展開した。最初に体壁葉を交換移植することで胸骨原基の発生を抑える実験を行なったが、腱前駆細胞の発生は抑えることができなかったため、筋前駆細胞を含んだ前肢芽を腹部レベルに移植することで、腱前駆細胞を含まない異所的な胚環境に筋芽細胞が置かれる実験系を新たに確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

発生学的視点で見る「形態の進化的傾向」についての理解は、前年度に引き続き確実に進展している。発生上の「揺らぎ」の実体の解明については、発生過程の精密観察により遺伝子発現や細胞系譜についてのデータを揃えつつある。また、2018年度は、四肢筋の発生と進化について現時点でのわれわれの理解とこれからの課題についてまとめた総説論文を発表した。来年度以降は、これを基礎として研究を進める。

今後の研究の推進方策

2018年度に確立したニワトリ前肢移植実験を本格的に展開し、腱前駆細胞のない異所的な胚環境に置かれた胸筋の筋芽細胞がどのようにふるまい、分化するかについてのデータを集める。これまでの研究により、カメ胚では胸筋の筋芽細胞は腹部レベル(他の羊膜類では胸骨ではなく腹直筋が発生するレベル)の外側体壁へ移動し真皮との結合を樹立するが、上記のニワトリ胚の移植実験はそれと同じような胚環境をつくり出す、一種の擾乱であり、カメへ至る系統で胸筋の真皮性結合が樹立されるようになった進化的変化との対応関係を検証できると期待している。
また、胚発生における筋-骨格結合の成立過程における揺らぎを検出すべく、ニワトリ胚を中心にし、筋芽細胞の分化、分布、遺伝子発現の経時的変化に関するデータを集める。特に鰓下筋群と前肢筋群について、個々の筋ごとの発生タイミングの違いに注目し、先に発生する筋と後から発生する筋とで形態形成の可塑性に差異がないかを探る。これらMMP筋において筋芽細胞が個々の筋へ分かれる過程では、筋-骨格結合を介在する腱前駆細胞に加え、非体節由来の筋結合組織(筋周膜等)の分化、分布の影響も大きいと予想される。2019年度は、これら非体節由来間葉の分化、分布、遺伝子発現の経時的変化および血管系との関連性に関するデータも集める。一方で、筋骨格系における進化的傾向を理解するため、脊椎動物において「進化可能だったパターン」を把握し、それがどのような系統で出現しえたのかを明らかにすることも必要である。この目的のため、唯一系統的位置が解明されていないデボン紀の脊椎動物化石種について高解像度三次元形態観察を行い、進化的傾向の全容の俯瞰と理解を目指す。

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] Max Plank Institute(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Max Plank Institute
  • [国際共同研究] University of Essex(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Essex
  • [国際共同研究] University of Pamplona/Navarra(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      University of Pamplona/Navarra
  • [国際共同研究] Academia Sinca(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Academia Sinca
  • [雑誌論文] Twins at conspicuously different developmental stages in a turtle egg.2019

    • 著者名/発表者名
      Hirasawa, T., Cantas, A., and Kuratani, S.
    • 雑誌名

      Zool. Sci

      巻: 36 ページ: 1-4

    • DOI

      10.2108/zs180107.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Inner ear development in cyclostome and the evolution of vertebrate semicircular canals.2019

    • 著者名/発表者名
      Higuchi, S., Sugahara, F., Oisi, Y., Pascual Anaya, J., Takagi, W., and Kuratani, S.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 565 ページ: 347-350

    • DOI

      10.1038/s41586-018-0782-y.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The neural crest and evolution of the head/trunk interface in vertebrates.2018

    • 著者名/発表者名
      Kuratani, S., Kusakabe, R., and Hirasawa, T.
    • 雑誌名

      Dev Biol.

      巻: 444 ページ: S60-66

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2018.01.017

  • [雑誌論文] The phylum Vertebrata: a case for zoological recognition.2018

    • 著者名/発表者名
      Irie, N., Kuratani, S., and Satoh, N.
    • 雑誌名

      Zoological Lett

      巻: 4 ページ: 32

    • DOI

      10.1186/s40851-018-0114-y.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Shark genomes provide insights into elasmobranch evolution and the origin of vertebrates.2018

    • 著者名/発表者名
      Hara, Y., Yamaguchi, K., Onimaru, K., Kadota, M., Koyanagi, M., Keeley, S. D., Tatsumi, K., Tanaka, K., Motone. F., Kageyama, Y., Nozu, R., Adachi, N., Nishimura, O., Nakagawa, R., Tanegashima, C., Kiyatake, I., Matsumoto, R., Murakumo, M., Nishida, K., Terakita, A., Kuratani, S., Sato, K., Hyodo, S., and *Kuraku, S
    • 雑誌名

      Nat. Ecol. Evol.

      巻: 2 ページ: 1761-1771

    • DOI

      10.1038/s41559-018-0673-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stepwise participation of HGF/MET signaling in the development of migratory muscle precursors during vertebrate evolution.2018

    • 著者名/発表者名
      Adachi, N., Pascual-Anaya, J., Hirai, T., Higuchi, S., Kuroda, S., and Kuratani, S.
    • 雑誌名

      Zool. Lett

      巻: 4 ページ: 18

    • DOI

      10.1186/s40851-018-0094-y.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evolution of the muscular system in tetrapod limbs.2018

    • 著者名/発表者名
      Hirasawa, T., and Kuratani, S.
    • 雑誌名

      Zool. Lett

      巻: 4 ページ: 27

    • DOI

      10.1186/s40851-018-0110-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The neural crest and origin of the neurocranium in vertebrates.2018

    • 著者名/発表者名
      Kuratani, S
    • 雑誌名

      Genesis

      巻: 56 ページ: 6-7

    • DOI

      10.1002/dvg.23213

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hagfish and lamprey Hox genes reveal conservation of temporal colinearity in vertebrates.2018

    • 著者名/発表者名
      Pascual-Anaya, J., Sato, I., Paps, J., Yandong, R., Sugahara, F., Higuchi, S., Takagi, W., Ruiz-Villalba, A., Ota, K. G., Wang, W., and Kuratani, S
    • 雑誌名

      Nat. Ecol. Evol.

      巻: 2 ページ: 859-886

    • DOI

      10.1038/s41559-018-0526-2.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Expansions, diversification and inter-individual copy number variations of AID/APOBEC family cytidine deaminase genes in lampreys.2018

    • 著者名/発表者名
      Holland, S. J., Berghuis, L. M., King, J. J., Iyer, L., Sikora, K., Fifield, H., Peter, S., Quinlan, E. M., Sugahara, F., Shingate, P., Trancoso, I., Iwanami, N., Temereva, E., Strohmeier, C., Kuratani, S., Venkatesh, B., Evanno, G., Aravind, L., Schorpp, M., Larijani, M., and *Boehm, T.
    • 雑誌名

      Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A.

      巻: 115 ページ: E3211-3220

    • DOI

      10.1073/pnas.1720871115

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Evolution and development of the cranium in early vertebrate2018

    • 著者名/発表者名
      Shigeru Kuratani
    • 学会等名
      The 46th Naito conference on Mechanisms of Evolution and Biodiversity
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Development and evolution of a novel musculoskeletal pattern in the turtle2018

    • 著者名/発表者名
      Shigeru Kuratani
    • 学会等名
      Tokyo2018 Cell and Developmental Biology Meeting 第70回日本細胞生物学会 第51回日本発生生物学会合同大会
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Development of cyclostomes and early evolution of vertebrates2018

    • 著者名/発表者名
      Shigeru Kuratani
    • 学会等名
      A Symposium to Celebrate the Award of the Japan Prize to Dr. Max D. Cooper
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Developmental bases for the acquisition of the turtle shell2018

    • 著者名/発表者名
      Shigeru Kuratani
    • 学会等名
      1st AsiaEvo Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 進化する形2019

    • 著者名/発表者名
      倉谷 滋
    • 総ページ数
      350
    • 出版者
      講談社現代新書
    • ISBN
      978-4065151129
  • [図書] "History and current theories of the vertebrate head segmentation" in Evolutionary Developmental Biology2019

    • 著者名/発表者名
      Kuratani S
    • 総ページ数
      14
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-3-319-33038-9
  • [備考] 理化学研究所 形態進化研究チーム

    • URL

      http://www.riken.jp/research/labs/bdr/evol_morphol/

  • [備考] 理化学研究所 生命機能科学研究センター 形態進化研究チーム

    • URL

      http://www.bdr.riken.jp/jp/research/labs/kuratani-s/index.html

  • [備考] 理化学研究所 倉谷形態進化研究室

    • URL

      http://www.riken.jp/research/labs/chief/evol_morphol/

  • [備考] 研究室webサイト

    • URL

      http://www.cdb.riken.jp/emo/japanese/indexj.html

  • [学会・シンポジウム開催] 1st AsiaEvo Conference2018

URL: 

公開日: 2019-12-27   更新日: 2022-08-18  

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