研究領域 | 進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~ |
研究課題/領域番号 |
17H06385
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
倉谷 滋 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00178089)
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研究分担者 |
PASCUAL JUAN 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30594098)
平沢 達矢 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60585793)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 脊椎動物 / 筋骨格系 / 発生 / 化石 / 比較形態学 |
研究実績の概要 |
発生における筋-骨格結合樹立過程とその進化上の変異性について、いくつか進展があった。まず、トラザメ胚とマウス胚において細胞系譜解析を展開し、形態的多様化が極端に小さく進化上「制約」の存在を予想させる外眼筋の発生過程の理解を進めた。特にトラザメ胚に対しては細胞標識が技術的に困難であったが、DiIインジェクションを駆使してこれを可能とすることに成功した。結果、外眼筋の筋-骨格結合樹立の際に、一部の腱は従来考えられてきた神経堤細胞由来ではなく、筋と同じく頭部中胚葉由来であることが突き止められた。形態変異性が比較的大きい四肢筋の腱も中胚葉由来であることから、外眼筋形態進化の制約要因として神経堤細胞の特性が関与している可能性は排除されることとなった。 次に、脊椎動物前肢に関して、進化における変化の方向性、制約と発生擾乱の結果としての変異がとりうるパターンについて、それぞれ化石記録、発生学実験および先天異常のデータを集めて比較を行った。その中で、進化(化石記録)上は観察される変化パターンの多くは発生擾乱の結果としても認められるが、一部は進化系列にしか見られない変化方向性であることが分かってきた。これは、発生上の揺らぎと進化的傾向の関連を解明するためには、進化過程で発生のロバストネスが変化した可能性を考慮に入れるべきであることを示唆する。 一方、発生機構的探索として、ニワトリ胚で組織移植による筋-骨格結合の発生擾乱実験を進めたが、研究室立ち入り制限が続いたため、本格的なデータ取得は次年度に持ち越された。 また、細胞型分化過程にある遺伝子発現プロファイル変化を明らかにするための比較トランスクリプトーム解析に関して、順調に円口類からのデータ取得、解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染対策のため年度前半に東京大学への立ち入りが制限された影響で、ニワトリ胚における筋-骨格結合発生擾乱実験が十分に実施できず、その面では当初の年次計画より少々遅れている。だが、実験中断期間中に、四肢動物前肢における筋骨格系の変異性についてのデータ取りまとめに関して進展があったため、プロジェクト全体としては大きくペースを乱すことはなかったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
一部の実験の実施時期に変更はあったものの研究活動が順調に進んでおり、当初計画どおり推進する。
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