計画研究
・共生可能性進化実験モデルの探索および確立: 我々が先行研究で確立したチャバネアオカメムシを主たるモデル系として、共生可能性の機構および進化に関する実験を遂行するとともに、他種カメムシ類やその他の昆虫類も含め、より有望な昆虫―微生物共生系の探索を広範におこなった。・共生可能細菌群の探索、分離、解析:共生細菌除去幼虫を日本各地の土壌試料に曝露、スクリーニングすることで、環境中の共生可能細菌群を網羅的に探索、分離、同定した。中でも南西諸島の宮古島は共生細菌Cのみが優占する特異な共生細菌叢を呈することが判明し、今後より詳細な解析を行っていくことにした。・共生能力と共生関連表現型の相関進化解析:異なる細菌間で競争感染実験を実施して、相対共生能力を定量化した。今後、これら異なるレベルの共生能力を示す細菌類について、感染密度、局在、垂直感染率、宿主共生器官の形態や大きさなどの相関、分散、揺らぎを測定し、共生能力と揺らぎ応答の関係について種間レベルで検討の予定である。・共生可能細菌の実験進化学的解析:共生可能細菌に感染させた昆虫系統を飼育維持し、適応度の高い個体を選抜して体内細菌を次世代に感染させることを継続的に繰り返して進化実験をおこなうための予備実験に着手した。・その他の研究成果として、ゾウムシ共生細菌による外骨格硬化の解明;ハムシ共生細菌による葉の細胞壁を消化する酵素産生の解明;多様なカメムシ類や甲虫類の新規共生細菌の解明などを実施した。
2: おおむね順調に進展している
従来の共生研究はすでに高度に確立された共生関係を対象としてきたが、近年の研究により環境中に特定の宿主生物(例えば半翅目昆虫のカメムシ類など)に潜在的な共生能力を有する自由生活性細菌が普遍的に存在することがわかってきた。本計画研究では、このような「潜在的共生細菌」の全貌を把握するとともに、既知の「必須共生細菌」や「任意共生細菌」と比較解析することにより、共生進化の条件や可能性、さらに共生進化を促進する要因や制約する機構をさぐり、共生進化ダイナミクスの本質的な理解をめざし、今年度は初年度として、前述の通り共生可能性進化実験モデルの探索および確立、共生可能細菌群の探索、分離、解析、共生能力と共生関連表現型の相関進化解析、共生可能細菌の実験進化学的解析について着手し、一定の成果が得られ、本格的な研究推進の準備がととのった。
来年度は計画研究2年目ということで、共生可能性進化実験モデルの探索および確立、共生可能細菌群の探索、分離、解析、共生能力に関わる分子機構の解析、共生能力と共生関連表現型の相関進化解析、共生可能細菌の実験進化学的解析といった全ての研究要素について、本格的に研究を展開する。特に共生可能性進化実験モデルをチャバネアオカメムシ以外にも広く探索すること、日本中からチャバネアオカメムシへの共生可能環境細菌群をスクリーニングすること、共生可能細菌の実験進化学的解析を本格的に稼働させることに力を入れる。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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