計画研究
本研究は、単純性脂肪肝から非アルコール性肝疾患・肝炎(NAFLD/NASH)、さらに肝硬変への進展について、炎症・線維化と関連する遺伝子動態の包括的な解析と、包括的single cell transcriptome 解析にてカギを握る細胞を同定した後、当該細胞の組織内分布に基づき、3次元情報を取得し、4次元モデル化を行う。これにより、肝硬変における炎症細胞社会を解明し、未病状態である単純性脂肪肝を定義し、単純性脂肪肝から肝硬変への進展を診断するマーカーの開発およびNASH/肝硬変の予防・治療法の開発を研究している。NAFLD/NASH進行に関わる治療標的分子同定のためにヒトNAFLD 110症例の肝組織の遺伝子発現プロファイルを行い、肝組織の炎症・線維化との関連を検討し、NASH進行に伴い変動する5つのシグナルパスウェイを同定した。ヒト肝組織を用いた包括的single cell transcriptome 解析の予備実験として、ヒト肝癌組織を用い、総括班・炎症細胞社会解析センターの橋本とsingle cell transcriptome 解析を行った。Selenoprotein PおよびLect2のノックアウトマウス(K/Oマウス)を作成し、これらのK/OマウスのNAFLD/NASH 動物モデルを作製した。我々が世界に先駆けて報告したヘパトカインであるSelenoprotein PとLect2のうち、Selenoprotein Pは骨格筋に働いて運動抵抗性を引き起こす(Nature Med 2017)他に、心筋虚血に保護作用を持つこと、自然免疫応答やインターフェロンβ誘導に関係することを明らかにした。また、NAFLD/NASHの病態解析、肝脂肪化・線維化の予防または治療として、リバビリンやPeretinoin、Empagliflozinなどの研究を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画どおりの研究を実行することができている。予定した成果を論文とした。
平成29年度に明らかにした実験条件を用いて、これまで明らかにしたヘパトカインであるSelenoprotein PおよびLect2のK/OマウスのNAFLD/NASH 動物モデルを用い,それぞれのK/Oマウスで線維化のないと肝発癌モデル(化学発がん)と線維化のある肝発癌の評価を行い、これらのヘパトカインSelenoprotein PおよびLect2と肝脂肪化、炎症、線維化、肝発癌の関連を示す。これらのK/Oマウスを用いた動物モデルで包括的single cell transcriptome 解析を行い、NASHを発症し肝発癌に至るまでの、肝臓を構成する肝細胞、内皮細胞、胆管細胞、クッパー細胞、肝星細胞、免疫浸潤細胞、線維芽細胞、線維細胞における発現遺伝子を解析し、肝臓における炎症細胞社会の変遷のカギを握る細胞とカギ分子を同定する。ヘパトカインが及ぼす生活習慣病への影響を解析する。さらに総括班および領域内の研究者と連携し、プロテオミクス、およびリピドミクス情報を得る。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
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