計画研究
本研究は、単純性脂肪肝から非アルコール性肝疾患・肝炎(NAFLD/NASH)、さらに肝硬変への進展について、炎症・線維化と関連する遺伝子動態の包括的な解析と、包括的single cell transcriptome 解析にてカギを握る細胞を同定した後、当該細胞の組織内分布に基づき、3次元情報を取得し、4次元モデル化を行う。これにより、肝硬変における炎症細胞社会を解明し、未病状態である単純性脂肪肝を定義し、単純性脂肪肝から肝硬変への進展を診断するマーカーの開発およびNASH/肝硬変の予防・治療法の開発を研究している。また、私達が同定した脂肪肝において増加するヘパトカインとの関係を研究している。マウスNASHモデルである3系統(動脈硬化高脂肪食群、高脂肪食群、コリン欠乏・メチオニン減量群)を用いてsingle cell isolationを行い、橋本と共同しNx1-Seq解析を行った。動脈硬化高脂肪食群ではマクロファージおよびT細胞の浸潤が顕著であった。それぞれの系統において異なる細胞集団の出現が認められ、高脂肪食に伴い脂肪酸β酸化、酸化ストレス亢進を認めた。また、それらの肝細胞集団ではSelenoprotein PやAlbuminの発現は低下していた。Selenoprotein Pは肝細胞、類洞内皮及びマクロファージに発現しており、類洞内皮での発現は脂肪食で上昇し、炎症に伴い低下していた。Selenoprotein PはRNAセンサーであるRIG-Iを制御していた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画どおりの研究を実行することができている。予定した成果を論文とした。
私達が作製したNAFLD/NASHマウスモデルを中心に肝臓の炎症組織社会の解析を継続する。これまで、マウスから経時的に血液、および肝臓サンプルを採取し、肝臓の包括的な発現遺伝子解析を行い、遺伝子、遺伝子経路、transcription factorの解析を行っている。また、総括班・炎症細胞社会解析センターの橋本と連携してNAFLD/NASHマウスモデルsingle cell transcriptome解析のための組織調整法、調整後の条件設定を行い、特徴的な細胞と遺伝子発現の解析を行っている。来年度は、同モデルの進展時期を変えて、例数を増やし、炎症と線維化の進展に重要な遺伝子および遺伝子経路の解析を行う。また、ヒト臨床材料におけるsingle cell transcriptome解析の条件を設定し、解析を開始するとともに、マウスモデルとの違いについて検討する。これまでNAFLD/NASHの進展に重要な役割を担う分子としてヘパトカインのひとつであるSelenoprotein Pの研究を行っている。来年度はSelenoprotein Pと炎症と線維化にかかわる類洞内皮細胞、マクロファージ、肝細胞との関連を明らかにする。さらに、Selenoprotein Pのconditional K/Oマウスを作製して、遺伝子と細胞との関係を解析する。領域内の他の臓器の研究者および総括班との連携を通じて、未病状態である単純性脂肪肝からNASHへの進展を予測するマーカー、肝硬変への進展度を測定するマーカーの研究、それらの進展を阻止する標的分子の創薬開発に資する研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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