計画研究
本研究では、SASPを阻害する天然物を見出し、慢性炎症を克服する戦略及び新規予防標的分子の発見を目的としている。ヒト線維芽細胞にブレオマイシンを加えることで細胞老化を誘導し、細胞外に分泌されるIL-6をELISA法によって測定するSASP評価系を構築した。天然物ライブラリーを対象とし、SASP阻害天然物のスクリーニング系とした。その結果、候補となる天然物を複数見出している。さらに、ELISAや定量RT-PCR法によりSASP factor(IL-6、IL-8、CCL20)の産生抑制能を確認し、その機序についての解析を進めた。その結果NF-kBやp38の関与が認められた。また、自動分注機を用いたスクリーニングの系を構築したことで、一度により多数の薬剤を対象としたスクリーニングを実施することが可能となった。このスクリーニングにより複数の新たなSASP阻害物質の候補が得られた。文献上SASP阻害が報告されているものの、その詳細な機序が不明な化合物Bに着目した。その結果、化合物Bと結合する複数のタンパク質の同定に成功した。siRNAを用いた検証により、結合タンパク質のうち一つにSASP阻害との関連が示唆された。NK細胞を活性化する物質を探索するためのスクリーニングによって、天然物エキスと認可済み薬剤からT-betの転写活性化を誘導する候補化合物を同定した。天然物エキスにおいてはT-bet活性化に関わる成分解析を行い、候補化合物の同定を行った。また認可済み薬剤ライブラリーからヒットした2種類の化合物について、NK細胞活性化機序の解析とin vivoにおける薬効の検証を行った。また、Immunomodulatory drugs (IMiDs)のNK細胞に対する免疫調節作用について明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
スクリーニングの結果、SASP阻害候補物質として化合物Aを見出した。化合物Aによる培養上清中のIL-6、IL-8の減少が確認できた。また、RNAレベルでもSASP因子の減少が見られた。SASPを制御するNF-kBの活性が化合物Aにより抑制されることを確認した。western blotを用いてSASP阻害に関する機序を調べたところ、リン酸化p38だけでなくtotal p38も減少していた。p38阻害剤を用いて、SASP阻害におけるp38の関与を確認したところ、培養上清中のSASPの抑制が確認できた。しかしながら、p38阻害剤ではNF-kBの減少は見られなかった。また、自動分注機を用いたスクリーニングにより、候補物質を新たに複数見出した。ケミカルバイオロジーを用いてSASP阻害物質に対する複数の結合タンパク質の同定に成功した。siRNAを用いた検証でSASP阻害との関連が示唆される結合タンパク質を見出した。NK細胞活性化物質スクリーニングによって、天然物エキスと認可済み薬剤からT-betの転写活性化を誘導する候補化合物を同定した。天然物エキスにおいてはT-bet活性化に関わる成分解析を行い、候補化合物の同定を行った。また認可済み薬剤からヒットした2化合物について、NK細胞活性化機序の解析とin vivoにおける薬効の検証を行った。また、IMiDs投与群では末梢組織で成熟型のCD27loサブセットの増加とT-betの発現上昇が見られた。IMiDs投与マウスではNK細胞のエフェクター機能が亢進し、メラノーマ細胞のNK細胞依存的な肺転移抑制が認められた。加えて、NK細胞の免疫監視に高い感受性を示すマウスT細胞リンパ腫の全身播種モデルにおいて、生物発光イメージングを用いた病態評価系を確立し、各臓器・組織に分布するNK細胞サブセットのがん転移制御における役割について解析した。
スクリーニングにより見出したSASP阻害天然物の候補化合物AがSASPを阻害する機序解析の結果を論文にまとめて投稿する。また、新たなスクリーニングで見出したSASP阻害物質の候補物質についてもSASP阻害の機序解析を行い、論文化する。SASP阻害物質の結合タンパク質を同定するというアプローチで得られた結合タンパク質について新規SASP制御機構の解明を目指す。スクリーニングによって見出した、T-bet活性化能を示す天然物エキス、ならびに認可済み薬剤から候補化合物についてさらに詳細な検討を進める。天然物エキスに関しては特定の産地由来のサンプルで活性が強いことが明らかとなっており、これら天然物エキス由来のT-bet活性化に関わる成分の同定をさらに進め、天然資源学的な解析も合わせて行う。またNK細胞活性化作用を示す化合物のターゲット分子について、T-bet活性化につながる機序を明らかにする。特にin vivoにおけるNK細胞活性化作用とSASP抑制作用について詳細に検討する。また各組織・臓器におけるNK細胞サブセットのSASP抑制における役割についてさらに詳細に解析する。T-betの発現調節によるNK細胞の機能成熟化に着目した新たな免疫制御の可能性について明らかにすることを目指す。
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