計画研究
微生物が産生する二次代謝産物は、歴史上、有用なケミカルツール分子や創薬シーズになっている。しかし、これら二次代謝産物の本来の化学コミュニケーションに基づいた生物学的意義はほとんど解明されていない。そこで、本研究代表者らが見出した新規細胞膜シグナル制御物質5aTHQsおよびstreptoaminalsを生産可能な放線菌Streptomyces sp. HEK616とTsukamurella pulmonsis TP-0596の複合培養系に着目し、それぞれ単独培養時と複合培養時のディファレンシャル・メタボローム解析や複合培養の詳細な条件検討等を行うとともに、取得した各種5aTHQs類の単剤あるいは併用による抗真菌活性を検討し、興味深い知見を得た。また、耐熱性放線菌が生産する熱ショック代謝産物(HSM)研究を行い、複数のHSMの存在を確認した。さらに、低酸素誘導因子HIF-1活性化経路阻害剤ベルコぺプチン生産放線菌KUSC-A08のドラフトゲノム解析を行った。一方、領域内連携を活用して、ベルコペプチンの細胞内化学シグナルの解析のためのプローブ作成を行い予備的なケミカルプロテオミクス解析を行うとともに、β-カテニン遺伝子活性型変異がん細胞選択的アポトーシスを誘導する天然物リガンドとしてノナクチンを見出した。さらに、がん細胞間あるいは腸内細菌間の化学コミュニケーション制御を目指して、ショウガ科ウコン由来のポリフェノール化合物であるクルクミンのプロドラッグ型水溶性化合物CMGの開発を行った。
2: おおむね順調に進展している
微生物の複合培養系のモデル系として、Streptomyces sp. HEK616とTsukamurella pulmonsis TP-0596の様々な複合培養条件を確立することができ、取得した各種5aTHQs類の単剤あるいは併用による抗真菌活性を明らかにした。また、微生物間化学コミュニケーションの理解に有用なHSMの存在を確認できた。一方、有用生物活性リガンドの開拓研究においても、β-カテニン遺伝子活性型変異がん細胞選択的アポトーシス誘導剤ノナクチンや抗がん剤CMGの開発に成功した。
引き続き、下記の研究項目を設定し本研究課題を遂行する。項目1:微生物間化学コミュニケーションの解析研究Streptomyces sp. HEK616とTsukamurella pulmonsis TP-0596の複合培養系などをモデル系として、5aTHQsおよびストレプトアミナール類の生産メカニズムや生物活性発現機構の解析を行う。また、耐熱性放線菌が生産する熱ショック代謝産物(HSM)の生産メカニズムや生物活性発現機構解析を行うとともに、ベルコペプチン生合成経路の解析などを行う。項目2:有用生物活性リガンドの開拓研究ベルコペプチンの生合成解析研究および全合成研究などにより、構造活性相関研究を行う とともに、細胞内化学シグナルの解析を行う。また、去勢抵抗性前立腺がんやβ-カテニン活性変異がんなどの難治性がんを標的として領域内リソースなどを活用して、有用生物活性リガンドの探索研究を行う。さらに、プロドラッグ型水溶性化合物CMG関連化合物の構造活性相関研究を行う。
(1)は本研究代表者の主催研究室ホームページ。
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