計画研究
微生物が産生する二次代謝産物は、歴史上、有用なケミカルツール分子や創薬シーズになっている。しかし、これら二次代謝産物の本来の化学コミュニケーションに基づいた生物学的意義はほとんど解明されていない。そこで、本研究代表者らが見出した新規抗生物質5aTHQs及びSTAMsを生産可能な放線菌Streptomyces sp. HEK616とTsukamurella pulmonis TP-0596の複合培養系に加えて、複数の有用な複合培養系を確立した。また、5aTHQ類の活性体・不活性体の混合物の生物活性発現機構を明らかにすることができ、これら5aTHQ類は新しいタイプの細胞膜シグナル制御物質であることが示唆された。一方、熱ショック代謝産物(HSMs)として、angucyclin-type化合物や新規化合物murecholamideなどを含む14種類の同定に成功した。さらに、従来のMarfey法と比較して、より温和な加水分解条件下で生成する極微量のアミノ酸や化学コミュニケーション分子でも検出可能な新規ラベル化剤の開発に成功した。一方、領域内連携を活用して、引き続き、ベルコペプチンの細胞内化学シグナルの解析のためのプローブ合成およびケミカルプロテオミクス解析を行うとともに、β-カテニン遺伝子活性型変異がん細胞選択的アポトーシスを誘導するリガンドとしてのmiclxinを見出し、詳細な作用機序を明らかにした。さらに、ショウガ科ウコン由来のポリフェノール化合物であるクルクミンのプロドラッグ型水溶性化合物CMGの治療抵抗性大腸がん細胞株における抗がん作用のメカニズムを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
微生物間化学コミュニケーションの理解に有用な微生物の複合培養系のモデル系として、Streptomyces sp. HEK616とTsukamurella pulmonis TP-0596の系に加えて、新たに複数の有用な複合培養系を確立できたとともに、14種類のHSMsの同定に成功した。さらに、5aTHQ類の活性体・不活性体の混合物の生物活性発現機構を明らかにできた。また、極微量の化学コミュニケーション分子を探索・同定するための高感度ラベル化剤の開発に成功した。一方、有用生物活性リガンドの開拓研究においても、β-カテニン遺伝子活性型変異がん細胞選択的アポトーシス誘導剤miclxinや革新的プロドラッグ型抗がん剤CMGの開発や作用機序解明に成功した。
引き続き、下記の研究項目を設定し本研究課題を遂行する。項目1:微生物間化学コミュニケーションの解析研究引き続き、Tsukamurella pulmonis TP-0596と当研究室保有の放線菌ライブラリーの複合培養系を試み、新規化合物生産系を確立し、生産メカニズムや生物活性発現機構の解析を行う。また、耐熱性放線菌が生産する熱ショック代謝産物(HSM)の生産メカニズムや生物活性発現機構解析を行うとともに、ベルコペプチン等の生合成経路の解析などを行う。項目2:有用生物活性リガンドの開拓研究ベルコペプチンなどの生合成解析研究および全合成研究などにより、分子プローブ創製研究を行うとともに、細胞内化学シグナルの解析を行う。また、β-カテニン活性変異がんやがん幹細胞を標的として、領域内リソースなどを活用して、有用生物活性リガンドの探索研究を行う。さらに、プロドラッグ型水溶性化合物CMGの希少疾患における薬効解析などを行う。
(1)は、本研究代表者の主宰研究室ホームページ
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 7件、 招待講演 11件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Org. Lett.
巻: 22 ページ: 3014-3017
10.1021/acs.orglett.0c00776
J. Antibiot.
巻: 73 ページ: 574-580
10.1038/s41429-020-0305-6
Histochem. Cell. Biol.
巻: 153 ページ: 199-213
10.1007/s00418-019-01842-z
Cancer Sci.
巻: 111 ページ: in press
10.1111/cas.14383
J. Org. Chem.
巻: 85 ページ: 4530-4535
10.1021/acs.joc.9b03516
Camcer Sci.
巻: 111 ページ: 239-252
10.1111/cas.14236
Chem. Asian. J.
巻: 15 ページ: 327-337
10.1002/asia.201901505
巻: 73 ページ: in press
10.1038/s41429-020-0279-4
J. Neurochemstry
巻: - ページ: in press
10.1111/jnc.14997
Chem. Commun.
巻: 55 ページ: 11956-11959
10.1039/c9cc06169j
巻: 21 ページ: 7524-7528
10.1021/acs.orglett.9b02801
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 58 ページ: 13486-13491
10.1002/anie.201905970
J. Diabetes Res.
10.1155/2019/8208237
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/sc-molsci/