研究領域 | 化学コミュニケーションのフロンティア |
研究課題/領域番号 |
17H06403
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松永 茂樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (60183951)
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研究分担者 |
高田 健太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90455353)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | カイメン / 共栄微生物 / 培養 |
研究実績の概要 |
八丈島でカイメンを採取し、採取地近傍に位置する東京島しょ農林水産総合センター八丈事業所内の水槽中で飼育した。その水槽は八丈島沖で汲みあげた海水が絶えず流れていて、カイメンの生息環境をよく再現している。ここで、カイメンTheonella swinhoeiが飼育可能か否かの検証を行った。6月に採取したカイメンは水槽中で10月までは健康な状態を維持したが、11月頃に表面が褐色がかり、組織が硬化してきた。また、11月に採取したカイメンを同様に飼育したところ、1ヶ月後に腐敗して死滅した。すなわち、T. swinhoeiは夏から秋にかけての季節の間は水槽中で飼育できるが、冬になると飼育が困難であることがわかった。さらに、飼育カイメンを用いてカイメン組織の解離実験を行った。飼育カイメンから組織の小片を切り出しても、切り傷は1週間ほどで治癒した。カイメンの解離には、Ca2+, Mg2+除去人工海水を用いた化学的解離およびミキサーを用いた機械的解離があるが、前者の解離法を用いるとカイメン細胞が損傷を受けその後の培養に支障をきたすとの報告があるため、主に機械的解離を行った。T. swinhoei中で物質生産の主役であると考えられる共生微生物のEntotheonellaは、様々な培地を用いて培養を試みたが増殖を検知できなかった。そこで、カイメン細胞が共存しないと増殖しないものと考え、機械的解離で得られた解離物そのものの培養を試みた。解離後の処理法を種々変えることにより、解離物をシャーレの底に付着させられるようになったが、付着物が時間とともにはがれていった。様々な工夫を凝らしたが、解離カイメンはシャーレの底に定着させることが困難である、との過去の研究者による報告を覆すことはできなかった。同様の研究を、わが国近海に生息し、有用物質を生産することがわかっている他種のカイメンについても行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究材料のカイメンT. swinhoeiを身近で飼育して、使用したいときに入手できるようになった。しかし、カイメン中の環境に最も近いカイメン解離物中での共生微生物の増殖には成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
カイメン中の環境にさらに近づけてEntotheonellaの増殖を検知することを第一の目標として研究を進める。これに加えて、昨年は実施できなかった、分画したEntotheonellaの化学的、生化学的分析を行い、培養条件設定の一助としたい
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