計画研究
a) 膜タンパク質の機能ドメインと海洋天然物の相互作用:アミロイド様ペプチドであるIAPPが脂質膜中でαヘリックス構造を取ることが知られている。梯子状ポリエーテル構造を有する天然リガンドであるイエッソトキシンと一部のモデル化合物がIAPPに対して特異的な親和性を示唆する結果を得た。また、アセチルコリン受容体に特異的に結合するスピロリドの合成研究および構造活性相関研究を進捗することができた。b) 電位依存性イオンチャネルに特異的に作用する生物活性リガンドの創製:海産天然物クランベシンBカルボン酸の単純化合成アナログを使ってNavの阻害活性機構の研究を行った。また、フグ毒テトロドトキシンの推定生合成前駆体群を合成、Navの阻害活性を評価することであらたなNavの機能阻害物質を探索した。c) 新しい作用様式でイオンチャネルに作動する天然物リガンドの探索と機構解明:電位依存性Na+チャネル(Nav)に作用する化合物を簡便に探索する方法を確立したので、その方法を用いて実際に海洋生物より探索し、陽性化合物として2種のセンブレンを同定し、活性発現に必要な骨格構造についての情報が得られた。1種は電気生理実験でNav阻害活性を確認できた。さらに天然素材や合成品などから広く本方法で陽性を示す化合物を探索した結果、別の陽性化合物が見つかり、本化合物の作用機序について新たな知見が得られた。d) 天然物リガンドと生体膜の相互作用解析: 天然リガンドが細胞内の受容体に結合する際に、細胞膜を透過する過程が重要であることが指摘されている。サポイン(OSW-1やdioscin)をリガンド化合物として用い、膜結合過程における脂質との相互作用を固体NMRなどによって解析した。その結果、リガンドの結合による脂質膜の形態変化や透過性増大の機構について新知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
理由 研究実績の概要欄に示したように、本計画研究班の研究が顕著に進捗したことが伺える。本年度軌道に乗った方針を推進することによって、領域研究として重要な成果を挙げることが可能になった。したがって、順調に進展していると考えている。具体的には、イオンチャネルに特異的に作用する天然物リガンドであるクランべシン、ペラミン、スピロリドについて合成化学的な方法論を開発することができ、阻害活性についても定量的な評価が可能となった。特に、クランベシンの構造簡略化アナログはナノモルオーダーの強い阻害活性を示したことは特筆に値する。新たに確立した電気生理学的評価法によって天然物リガンドの探索研究を進め、有望は候補化合物を見出すことに成功した。また、ATPアーゼに関する研究においては、膜貫通αヘリックスに結合する阻害剤・バフィロマイシンを重点的に取り上げた。具体的には、ATPアーゼ阻害剤であるバフィロマイシンが示す強力な活性は脂質膜に対する高い親和性による寄与が約30%を占めることを低活性誘導体との比較により示すことができた。
a) 膜タンパク質の機能ドメインと海洋天然物の相互作用:新たな天然物リガンドとして、神経変性疾患の医薬品リード化合物として期待されるスピロリド(SPX)に着目し、SPX C の立体化学が未決定である4位の立体配置の決定および天然物の環状イミンの安定性に寄与する構造的要因の解明を行う。さらにAChRへの結合活性やチャネル活性試験を実施することで、より詳細な作用解析を行う。b) 電位依存性イオンチャネルに特異的に作用する生物活性リガンドの創製:海産天然物クランベシンBのカルボン酸部分の単純化合成アナログを使ってNavの阻害活性機構の研究を行う。また、フグ毒テトロドトキシンの推定生合成前駆体群を合成、Navの阻害活性を評価することであたらたなNavの機能阻害物質を探索する。c)新しい作用様式でイオンチャネルに作動する天然物リガンドの探索と機構解明:電位依存性Na+チャネル(Nav)に作用する化合物を簡便に探索する方法を確立し、すでに陽性化合物を同定している。1種は電気生理実験でNav阻害活性を確認できた。類似化合物の活性も調べて比較し、活性発現に必要な基本構造を明らかにする。さらに天然素材や合成品などから広く本方法で陽性を示す化合物を探索した結果、別の陽性化合物が見つかったので本化合物の作用機序や構造活性相関について解明を進める。d) 天然物リガンドと生体膜の相互作用解析:天然物リガンドの膜を透過性を注目し、その機構を細胞内に作用標的分子を有する界面活性化合物について解明する。特に、膜への結合過程とその後の脂質二重膜構造を改変する過程について定量的に解析する。また、領域内の共同研究としてマイトトキシン感受性および非感受性の細胞株についての配列解析を実施する。その後、欠損遺伝子に対するマイトトキシンが及ぼす影響をより直接、確かめることによって作用標的に迫る。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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