計画研究
本研究は3段階ですすめている。①人工栄養素結合体ライブラリーの作成、②細胞ベーススクリーニング、③作用メカニズムと化学シグナルの解析である。2019年度までに、脂質合成の司令塔であるSREBP転写因子を阻害する栄養素結合体DHGを同定した。作用メカニズムと化学シグナルの解析を行い2019年度に最初の栄養素結合体DHGを論文発表した(ACS Chem. Biol., 2019)。2020年度は、自然免疫を活性化する栄養素結合体コリカマイドのメカニズム研究を行い、論文発表した(Angew. Chem. Int. Ed., 2021)。ウイルスの形状を模倣してTLRによる免疫応答シグナルを活性化し、ワクチンアジュバントとして機能した。また、2020年度までの新学術研究の中で、細胞内ラジカルによる新規化学シグナルを発見した。細胞内活性酸素ラジカルに敏感に反応しタンパク質を分解させるペプチド配列を、スクアレン合成酵素(SQS)のC末端配列に見いだし、報告した(J. Am. Chem. Soc., 2020)。
1: 当初の計画以上に進展している
人工栄養素結合体ライブラリー免疫を賦活する化合物を作成し、そこからエネルギー代謝のシグナルを変調するDHGと免疫を賦活するコリカマイドという二つの生理活性分子の発見に成功した。標的タンパク質の同定は概して困難だが、これらの標的タンパク質を同定し、論文発表した(ACS Chem. Biol., 2019)(Angew. Chem. Int. Ed., 2021)。さらに、新学術研究の中で化学コミュニケーションを研究する中で、光分解ペプチドを偶然に発見し、論文発表した(J. Am. Chem. Soc., 2020)。これらの化合物は、エネルギー代謝シグナル、免疫シグナル、ラジカルシグナルを変調する新規物質。当初の計画以上に進展しているといえる。
<免疫を賦活する栄養素結合体> 2021年度は、コリカマイドの誘導体展開を行い、さらに強力な化合物を得て、自然免疫活性化に必要な化学シグナルをさらに追究する。<光分解ペプチドの化学コミュニケーション> 2020年の研究で、その最小配列はラジカルとの反応性が高いアミノ酸が連続する18アミノ酸であることが分かってきた。2021年度は、様々な刺激により細胞内でラジカルを生成させた際に、どのようなタンパク質が分解されるか、プロテオーム解析により検討する。プロテオーム解析により同定されたタンパク質の中に、この最小配列に類似するアミノ酸配列を有するタンパク質が存在するか確認する。そのようなタンパク質が存在した際には、ラジカルにより直接分解されている可能性が高いため、個別に解析する。ランダムペプチドライブラリーからラジカル感受性ペプチドを探索する系を構築する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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https://www.scl.kyoto-u.ac.jp/~uesugi/ja/index.php