研究実績の概要 |
「ChemProteoBaseの拡充化・高度化、並びに、改変CETSAの開発」:昨年度に引き続き、ChemProteoBase(間接法)解析の精度向上のために、作用標的の明らかな標準化合物のプロテオーム解析を行い、ChemProteoBaseのデータベース拡充を行った。解糖系やTCA回路などのエネルギー代謝に関わるたんぱく質に着目して解析する手法を開発した。同定済みの274スポットのうち解糖系の24スポット8たんぱく質、並びに、TCAサイクルに関与する12スポット9たんぱくの薬剤処理による変動をスコア化して、簡便に評価できるシステムを作成した。本系を用いて、スクリーニングで得られた天然物並びに、化合物バンクの化合物を評価し、Unantimycin A, NPL40330がミトコンドリアに作用することを見出した(Biochim Biophys Acta, 1867: 28-37, 2019)。また、癌幹細胞様細胞を用いたスクリーニングによって取得された化合物NPD2381がセリン合成経路内の酵素の発現量を増加させることを見出し、ミトコンドリアを標的とすることを示した(FEBS Lett, 593:763-776, 2019)。昨年度、コントロール化合物を用いて2DE-CETSAの解析系を構築したが、スクリーニングで得られた化合物について解析を進めた。 「有用生物活性リガンドの開発」:細胞の代謝制御機構を標的とした標的ベースの探索、あるいは、セルベースの探索を行った。ユニークな化学構造をもつキノコの新規生理活性物質ヒトヨポディンAを単離した(Org Lett, 20: 6294-6297, 2018)。また、上記システムから得られた結果に基づく解析を行い、Unantimycin A, NPL40330の標的がそれぞれ複合体III、複合体Iであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
作用標的の明らかな既知物質を用いたChemProteoBaseのデータベースの拡張やシステムの開発は順調に進んでおり、様々な標的に対応する可能性を高めている。これらの解析系を用いて生理活性物質を解析することによって、共同研究を通した幾つかの成果に結びついた(Biochim Biophys Acta, 1867: 28-37, 2019; FEBS Lett, 593:763-776, 2019; Mol Pharm, 16: 1423-1432, 2019)。また、2-D DIGEを利用した2DE-CETSAの解析系の構築については、スタンダードの化合物を用いた条件検討がすみ、その条件を用いて、探索研究で得られた化合物について解析を行った。、化合物の標的に対する実証実験も進みつつあることは、予想以上に計画が進んでいることを示している。さらに、系の構築を進め、今までのChemProteoBaseと組み合わせることによって、より多様な標的に対応した解析が可能となることが期待される。
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