計画研究
ChemProteoBaseの拡充化・高度化、並びに、改変CETSAの開発:昨年度に引き続きChemProteoBaseのデータベース拡充を行った。改変CETSA(2DE-CETSA)の開発については、コントロールとしてHSP90阻害剤ゲルダナマイシンを用いて検討したところ、標的タンパク質として知られているHSP90並びにGRP98が検出された。さらに、大腸がん株化細胞の増殖阻害を指標としたスクリーニングで見出された化合物 NPD10084について解析したところ、標的タンパク質としてピルビン酸キナーゼM2(PKM2)が同定され、本解析法が化合物の標的分子網羅的解析法として有効であることが示された。また、がん関連線維芽細胞(CAF)の遊走を阻害する化合物の探索から得られたNPD8733について、光親和型固定化法を用いた化合物ビーズによる結合タンパク質の解析を行った結果、valosin-containing protein (VCP)/p97が同定され、NPD8733がVCPを介してCAFの遊走を阻害することが示唆された。有用生物活性リガンドの開発:2DE-CETSA で標的がPKM2であると同定された化合物NPD10084はPKM2のピルビン酸キナーゼ活性は阻害しなかったが、PKM2とβ-cateninあるいはSTAT3の結合を阻害することによって、増殖シグナルの下流にあるc-Myc、Cyclin D1の発現やリン酸化を阻害することによって、がんの増殖を阻害することが示唆された。2DE-CETSAの構築ならびにNPD10084の解析はCell Chem Biol (Nagasawa I, 27: 186-196, 2020)に、NPD8733の解析についてはJ Biol Chem (Suvarna K, 294:2988-2996, 2019)に掲載された。
1: 当初の計画以上に進展している
作用標的の明らかな既知物質を用いたChemProteoBaseのデータベースの拡張やシステムの開発は順調に進んでおり、様々な標的に対応する可能性を高めている。これらの解析系を用いて生理活性物質を解析することによって、共同研究を含む幾つかの成果に結びついた(Li J, J Cell Mol Med, 23:6283-6294, 2019, Suvarna K, J Biol Chem, 294:2988-2996, 2019)。また、この時点で2-D DIGEを利用した新しい解析系2DE-CETSAの構築ができたことは、予想以上に計画が進んでいることを示している。さらに、解析系の最適化を進め、今までのChemProteoBaseと組み合わせることによって、より多様な標的に対応した解析が可能となることが期待される。
1)引き続きChemProteoBaseの拡張のための既知化合物の解析を行うほか、スポットの同定情報を考慮した解析法を改良することによって、迅速でより情報量の多い結果を返すシステムの構築を行う。2)構築された2DE-CETSAの解析系については、さらに良い解析系にしていくために系の最適化を行なっていく。新規化合物の解析に応用することによって、化合物の標的タンパク質を明らかにすることを通して、解析系の有用性を示す。3)有用生物活性リガンドの開発のために、化合物アレイによる標的ベース探索・細胞表現型に基づくセルベース探索を行い、そこで得られた化合物について、ChemProteoBase解析や2DE-CETSAの解析系を適用し、解析系の有用性を示すほか、新規化合物の標的を解析する。領域内の、慶応大学・榊原教授、理研・Dr. Boone、順天堂大学・井本教授らと共同研究を進めているが、さらに、プロジェクト内の新規化合物の解析を行うことによって、プロジェクトに貢献する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (22件) (うち国際共著 6件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 6件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Biosci Biotechnol Biochem
巻: 84 ページ: 1303-1307
10.1080/09168451.2020.1725419
巻: 84 ページ: 876-886
10.1080/09168451.2020.1714421
J Microbiol Biotechnol
巻: 30 ページ: 31-37
10.4014/jmb.1908.08043
Bio-protocol
巻: 10 ページ: e3516
10.21769/BioProtoc.3516
巻: 10 ページ: e3517
10.21769/BioProtoc.3517
Cell Chem Biol
巻: 27 ページ: 186-196.e4
10.1016/j.chembiol.2019.11.010
Am J Orthod Dentofacial Orthop
巻: 157 ページ: 680-689
10.1016/j.ajodo.2019.04.037
腫瘍内科
巻: 25 ページ: 2-8
Sci Rep
巻: 9 ページ: 18023
10.1038/s41598-019-54473-8
J Microbiol Methods
巻: 167 ページ: 105743
10.1016/j.mimet.2019.105743
J Antibiot
巻: 72 ページ: 986-990
10.1038/s41429-019-0239-z
巻: 72 ページ: 991-995
10.1038/s41429-019-0217-5
巻: 72 ページ: 996-1000
10.1038/s41429-019-0229-1
Eur J Org Chem
巻: 2019 ページ: 5486-5496
10.1002/ejoc.201900586
ACS Catal
巻: 9 ページ: 7443-7448
10.1021/acscatal.9b01628
ACS Chem Biol
巻: 14 ページ: 1964-1971
10.1021/acschembio.9b00453 ]
巻: 14 ページ: 1819-1828
10.1021/acschembio.9b00410
J Cell Mol Med
巻: 23 ページ: 6283-6294
10.1111/jcmm.14514
J Biochem
巻: 166 ページ: 41-50
10.1093/jb/mvz007
Oxid Med Cell Longev
巻: 2019 ページ: 5459862
10.1155/2019/5459862
巻: 9 ページ: 5802
10.1038/s41598-019-42268-w
巻: 72 ページ: 853-854
10.1038/s41429-019-0237-1
http://www.cbrg.riken.jp/csrs/ja/