研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
17H06415
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
齊藤 達哉 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 教授 (60456936)
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研究分担者 |
森田 英嗣 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (70344653)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | オルガネラ / 病原体 / 自然免疫 / 生体防御 |
研究実績の概要 |
1つのオルガネラの中には、異なる役割を担う場が存在し、これを“オルガネラ・ゾーン”と定義する。本計画研究では、細胞の様々な様態におけるオルガネラ・ゾーンを可視化し、その形成機序や生物学的な意義を明らかにする。また、オルガネラ・ゾーンを制御する分子の探索も行う。特に、研究代表者および研究分担者が専門とする“病原体に対して誘導される自然免疫を介した生体防御応答”について、オルガネラ・ゾーンの観点から解析する。病原体を感知してその排除を誘導する自然免疫は、生体防御応答において重要な役割を果している。我々は、細菌やウイルスなどの病原体感染に対して誘導される自然免疫の正負の制御にオルガネラが深く関わること、ウイルス感染時に複製オルガネラと呼ばれる特殊なオルガネラが出現してその増殖に深く関わることをこれまでに見出している。平成29年度は、グラム陰性細菌を貪食した血球系細胞において、リソソーム膜損傷を起点として活性化する自然免疫機構について解析し、培養細胞レベルおよび生体レベルで当該機構を介した炎症誘導の抑制に関わる生理活性脂質を同定した。また、RNAウイルスの感染した細胞において、2本鎖RNAにより活性化する自然免疫機構について解析し、当該機構を介したⅠ型インターフェロンの産生に関わる膜輸送因子を同定した。一方で、RNAウイルスの感染した細胞において、複製オルガネラの形成・機能発現を促すゾーンや周囲のオルガネラとの連携を図るゾーンに蓄積する因子群を複数同定した。さらに、RNAウイルスの感染した細胞において、複製オルガネラが形成される過程を可視化するため、超解像顕微鏡の観察条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オルガネラ・ゾーンを形成する分子機構、オルガネラ・ゾーンの生物学的意義およびオルガネラ・ゾーンを制御する分子の同定が予定通りに進んでいる。また、オルガネラ・ゾーンの可視化についても、条件検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
①細菌感染時に誘導される“オルガネラ応答ゾーン”の形成機序と意義を解明:前年度に、細菌感染時に誘導される炎症応答を抑制する生理活性脂質を同定した。ビオチン化された当該脂質が販売されているので、今年度の解析では、当該脂質に結合するたんぱく質を精製し、標的因子を同定する。さらに、同定した因子がどのように応答ゾーンの形成や機能に関わるのか、その分子機序を明らかにする。 ②ウイルス感染時に誘導される“複製オルガネラ形成を促すオルガネラ応答ゾーン”を解明:複製オルガネラ形成に関わる小胞体の応答ゾーンに集積するウイルス因子群とそれらによってリクルートされる宿主のストレス応答制御機構の関わりを明らかにする。また、ウイルス複製オルガネラ形成について、超解像度顕微鏡による詳細な観察および蛍光顕微鏡によるライブ観察を行い、応答ゾーンの可視化を試みる。 ③“複製オルガネラと他オルガネラの連携ゾーン”の形成機序と意義を解明:プロテオミクスによりこれまでに同定した複製オルガネラ及びミトコンドリア膜上に存在する因子に着目する。これら因子の強発現やノックダウンがウイルスゲノム複製とウイルス粒子産生にどのような影響を与えるか調べ、オルガネラ連携ゾーンに関わる新たな因子の同定を試みる。 ④オルガネラ・ゾーンにおいて生体防御応答を担う新たな因子の同定:前年度に、オルガネラに局在する膜輸送因子群に対するミニsiRNAライブラリーを用いて、病原体複製を抑制する新たな生体防御関連因子を探索し、候補因子を複数同定した。今年度は、同定した因子がゾーンの形成や機能に関わるのか、その局在や作用機序を明らかにする。
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