計画研究
1つのオルガネラの中には、異なる役割を担う場が存在し、これを“オルガネラ・ゾーン”と定義する。本計画研究では、細胞の様々な様態におけるオルガネラ・ゾーンを可視化し、その形成機序や生物学的な意義を明らかにする。また、オルガネラ・ゾーンを制御する分子の探索も行う。特に、研究代表者および研究分担者が専門とする“病原体に対して誘導される自然免疫を介した生体防御応答”について、オルガネラ・ゾーンの観点から解析する。R2年度は、グラム陰性細菌を貪食した血球系細胞において、リソソーム膜損傷を起点として活性化する自然免疫機構について形態学的な観察を行った。特に、Live cell imaging for secretion activity(LCI-S)を行い、細菌に対する応答時に細胞膜上に形成されるゾーンから炎症性サイトカインが放出されることを示唆するデータを得た。また、細菌感染時に誘導される“オルガネラ応答ゾーン”の形成に関与する新規オートファジーアダプター因子については、同定した因子が損傷膜にリクルートされる機構について明らかにした。この因子を欠損する遺伝子改変マウスを作製し、変異がジャームラインを超えたことを確認した。さらに、ゲノムワイドguide RNAライブラリーを導入した後、膜損傷により誘導される細胞死に耐性を有するようになった細胞株プールを樹立した。一方で、電子線トモグラフィー解析を行い、RNAウイルス複製オルガネラにおける分解ゾーン膜構造を明らかにした。また、そこに集積する宿主因子について欠損細胞を作成し、膜構造形成における役割を明らかにした。また、本研究によって同定した複製オルガネ―ミトコンドリアコンタクトサイトに局在する因子の欠損細胞を用いて、複製オルガネのミトコンドリアとの接触の生物学的意義を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
生体防御応答に関わるオルガネラ・ゾーンの形成機序、制御分子、生物学的意義の解明が進んでいる。さらに、オルガネラ・ゾーンの可視化についても、様々な顕微鏡技術を駆使して、成果を得ている。
①細菌感染時に誘導される“オルガネラ応答ゾーン”の形成機序と意義を解明:細菌によるリソソーム膜損傷を起点とするシグナル伝達を介して細胞膜にポアが形成される。細胞は死に至るが、同時に生体防御応答を担う因子が細胞外へと放出される。R3年度は、LCI-S実験を繰り返して前述の説を証明した後、当該ゾーン形成を制御する分子機構を明らかにする。また、損傷膜に対するオートファジーレセプターとして同定した因子がどのように標的にリクルートされるか、当該因子をベイトとしたIP-MS解析によって同定したE3ユビキチンリガーゼとの相互作用に着目し解析を進める。さらに、当該因子を欠損するマウスを用いて、生体防御における役割を明らかにする。②ウイルス感染時に誘導される“複製オルガネラ形成を促すオルガネラ応答ゾーン”を解明:R3年度は、機能スクリーニングによって同定した宿主因子のファミリー分子に着目し複製オルガネラ分解ゾーンの形成機構について解析を進める。主に、本研究によって同定したLNPと同等の作用を示す因子の機能に焦点を当て、これら因子群の遺伝子破壊株を作成し、ウイルスの増殖とウイルス複製オルガネラ形成のイメージング解析を行い、これらゾーン形成の分子機序を明らかにする。③“複製オルガネラと他オルガネラの連携ゾーン”の形成機序と意義を解明:昨年度に引き続き本研究によって同定したTMEME43の機能解析を進める。この遺伝子破壊株を用いて、ミトコンドリアが持つ自然免疫およびアポトーシスシグナル伝達の変化について調べ、複製オルガネラ-ミトコンドリ連携ゾーンの意義を明らかにする。④オルガネラ・ゾーンにおいて生体防御応答を担う新たな因子の同定:今年度は、guide RNAの標的を同定した後に、標的分子がどのようなオルガネラに局在し、生体防御応答のどの段階を制御するのかを明らかにする。
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