研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
17H06416
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今泉 和則 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (90332767)
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研究分担者 |
金子 雅幸 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (10322827)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / オルガネラゾーン / DNA損傷応答 / 小胞体 / ERストレスセンサー |
研究実績の概要 |
本研究課題では、小胞体膜貫通タンパク質OASISがDNA損傷時に核膜の一部に集積する分子機構とその生理機能を解明するとともに、OASISが集積する部位を核-小胞体連携ゾーンと定義し、ゾーン形成の分子機構にも迫る。今年度は以下のことを明らかにした。1)DNA損傷後に核膜の発芽した部位(ブレッブ)に集積するOASISは活性化前の全長型であるが、その後速やかに膜内切断を受け、核マトリックス側に移行することを明らかにした。2)電子顕微鏡観察において、OASISが集積する核膜ブレッブの部位は、核膜二重膜構造は保たれているものの、内膜直下のヘテロクロマチンが消失しており、内膜の裏打ち構造である核ラミナが崩壊していることを示唆している。実際に免疫染色で確認したところOASISが集積する部位にはラミンAのシグナルが全く観察されなかった。3)OASISのdeletion mutantを作成し、OASISのどの領域が核膜ブレッブへの集積に不可欠であるかを検討したところ、N末端側の複数の領域がそれに関与することがわかった。また、N末端を大きく欠失したmutantでは、核膜のinvaginationを誘発するとともに、invaginationした核膜に強く集積した。4)OASISの転写ターゲットをRNAseq法で網羅的に探索した結果、細胞周期抑制因子p21やSenescence-associated secretory phenotype(SASP)に関連した遺伝子などが候補として見出せた。以上の結果は、DNA損傷後に形成される核膜ブレッブに集積したOASISは、細胞老化を促進する遺伝子群を転写誘導し細胞周期を一時的に停止させている可能性が示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の項目で記載したように、計画した実験の多くが予定通りに進行している。3)の結果から、ブレッブ形成に関わる因子はOASIS以外に複数のタンパク質が関わりそれらが相互作用することでブレッブ形成を時空間的に制御されている可能性がわかってきた。次年度に予定しているOASIS結合タンパク質の同定に向けて貴重な情報が得られたと考えている。DNA損傷後に核膜に集積するOASISの生理機能については未解明であったが、今年度の研究成果から、OASISは細胞老化を誘導し、DNA損傷や核膜障害に応答する役割があることが示唆され、次年度以降の生理機能解明に向けて基盤となるデータが得られたことは極めて意義深い。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究をさらに発展させ、DNA損傷応答および核膜ストレス時におけるOASISの役割について深く解析を進めていく。特にOASISと相互作用する分子の同定を優先的に進め、核膜ブレッブ形成の分子機構を解き明かす。その後にOASISノックアウトマウスや細胞を用いて生体内での働きを明らかにする。
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