計画研究
1.細胞増殖シグナルにおけるリサイクリングエンドソーム(RE)応答ゾーンの解析。 Hippo/YAP経路は、細胞増殖に関わるシグナル経路である。前年度の解析から、増殖時のYAPの脱リン酸化にRE 膜細胞質側のホスファチジルセリン(PS)が重要な役割を果たす事を見出 した。そこで本年度では、PSが形成 するRE応答ゾーンにおいてYAPおよび関連分子がどのように制御されるかを解析し、PSを認識するNEDD4 E3リガーゼがLatsのユビキチン化を担うこと、REにおいてYAPを脱リン酸化する機構が存在すること、を見出した。2.自然免疫応答におけるゴルジ体⇒エンドソーム⇒リソソーム連携ゾーンの解析。 STINGは、ウイルス等の病原体由来のDNAに 応答して炎症を惹起するのに必要な蛋白質である。これまでに、DNA刺 激によりSTINGが小胞体からゴルジ体に移行し、ゴルジ体の一部の領域で活性化された後にREを経由して不活化される事を見出している。本年度では、STING活性化/不活性化における各オルガネラ・ゾーンの役割を解析し、ニトロ化不飽和脂肪酸がSTINGのゴルジ体でのパルミトイル化を抑制すること(PNAS 2018)、BK1のリクルートの場がゴルジ体の特定のゾーンに限局していることを見出した(BBRC 2018)。3.TLR4 受容体における細胞膜応答ゾーンの解析。これまでに、DPPC という二本の脂肪酸鎖がともに飽和脂肪酸であるリン脂質が TLR4 の活性化を促進し、炎症応答を惹起すること、またマクロファージにDPPCが豊富に存在することを見出している。今年度は、既に他の細胞においてDPPCの合成に関与することがしられているLPCAT1のマクロファージにおけるDPPC産生への関与を検証した。その結果、マクロファージのDPPC産生にはLPCAT1以外の合成酵素の関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、細胞増殖シグナルにおけるリサイクリングエンドソーム(RE)応答ゾーンの解析、及び自然免疫応答におけるゴルジ体⇒エンドソーム⇒リソソーム連携ゾーンの解析を行い、オルガネラゾーンが細胞内シグナルに果たす役割を見出すことができた。特に自然免疫応答におけるゾーン解析において、ニトロ化不飽和脂肪酸がSTINGのゴルジ体でのパルミトイル化を抑制すること、及びTBK1のリクルートの場がゴルジ体の特定のゾーンに限局していることを見出し、論文として報告することができた(PNAS 2018、BBRC 2018)。よって本年度の研究は概ね順調に進展していると判断した。
1.細胞増殖シグナルにおけるリサイクリングエンドソーム(RE)応答ゾーンの解析。来年度では、PSが形成 するRE応答ゾーンにおいて制御受ける可能性があるホスファターゼに関して解析を行う。2.自然免疫応答におけるゴルジ体⇒エンドソーム⇒リソソーム連携ゾーンの解析。来年度はSTINGが活性化するトランスゴルジネットワークに特異的に局在する脂質分子の 同定を目指す。3.TLR4 受容体における細胞膜応答ゾーンの解析。来年度はDPPC合成に関与する酵素をスクリーニングするとともに、DPPCによるTLR4活性化機構の解析をおこなう。オルガネラ・ゾーン統合解析プロジェクト 「オルガネラ・ゾーン統合解析プロジェクト」において LC-MS/GC-MS を用いた脂質 解析、PIPs /P S プローブなどの膜脂質可視化技術を用いて各班のオルガネラ・ゾーンの解析を行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件) 図書 (7件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 13(12) ページ: e0208396
10.1371/journal.pone.0208396
J Am Chem Soc
巻: 140(18) ページ: 5925-5933
10.1021/jacs.8b00277
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 115(33) ページ: E7768-E7775
10.1073/pnas.1806239115
Biochem Biophys Res Commun
巻: 505(1) ページ: 81-86
10.1016/j.bbrc.2018.09.089
巻: 503(1) ページ: 138-145
10.1016/j.bbrc.2018.05.199
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/manages/topics/data/1533013624_1.pdf