計画研究
細胞外に分泌または細胞膜に提示されるタンパク質の多くは、糖鎖やリン酸化などの様々な翻訳後修飾を受けることで正しい機能を発揮する。そのように重要な翻訳後修飾がゴルジ体や小胞体でどのように制御されているかは重要な問題であるが、いまだその全貌は明らかでない。本研究では、翻訳後修飾におけるオルガネラゾーンの役割を明らかにすることで、細胞生物学の新たな側面を明らかにする。本年度は、糖鎖やリン酸修飾を司るゾーンの解析のスピードアップを図るために、その解析に適した細胞株のスクリーニングを行った。当初の計画ではショウジョウバエの個体を用いた実験を中心に計画していたが、培養細胞の実験に較べると、実験動物内では早いもののやはり時間は相当かかる。従来、ショウジョウバエではマクロファージ由来のS2細胞が使われてきたが、この細胞ではオルガネラゾーンがよく観察されないという欠点があった。そこで、上皮系組織由来の細胞株をいくつか細胞バンクから取り寄せて検討したところ、GPI修飾ゾーンが観察される株を4株同定することができた。これらの細胞株を用いることで、当初の個体を用いる実験計画よりも早く研究を進めることが期待できる。ゾーンの形成機構を明らかにするについことが本研究の大きな目的の一つである。そのために、ゾーンに局在する分子に結合するタンパク質の同定し、その中からゾーン局在に必要なタンパク質を見出す計画を立てている。GPI生合成に必要な酵素PIG-Bは、小胞体と連結する核膜ゾーンに局在する。そこで、そのPIG-Bに結合するタンパク質をまず同定することにした、具体的には、PIG-Bに結合したタンパク質をPIG-Bに対する抗体を用いた免疫沈降によって同定する。免疫沈降の具体的な方法について当該領域の尾野先生と予備実験を行った。その結果、溶出条件など苦労したが、良いプロトコールを作ることができた。
2: おおむね順調に進展している
オルガネラゾーンを解析できる細胞株が同定できたのは大きな収穫である。これによって次年度からの解析のスピードアップが期待できる。また、結合タンパク質を同定するためのプロトコールが確立したことで、来年度早々には結合タンパク質を明らかにでき、その解析に進むことができる。したがって、おおむね計画通りということができる。
次年度は、ゾーンに局在する分子に結合するタンパク質を同定し、そのRNAiや変異体の解析を行う。その解析から、同定したタンパク質が実際にゾーンへの局在に必要な分子であるかを決定する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (3件)
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