研究領域 | 細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読 |
研究課題/領域番号 |
17H06421
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
後藤 聡 立教大学, 理学部, 教授 (60280575)
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研究分担者 |
石川 裕之 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (00398819)
金川 基 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00448044)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 修飾ゾーン / GPI / ゴルジキナーゼ / リビトールリン酸 |
研究実績の概要 |
(1)GPI修飾ゾーン内の核膜ゾーンに局在するPIGBについて解析を進めた。昨年度までにPIGBが核膜ゾーンに局在することがGPI修飾に必要であることを証明したが、本年度は、このPIGBの新たな機能を見出した。すなわち、核内膜直下の核ラミナ(ラミンが主要因子)に均一な分布にPIGBが必要であることがわかった。この機能にはGPI合成酵素の活性は必要ないことを見出した。(後藤) (2)本年度は、RNAiによりリン酸修飾ゾーンが減少した遺伝子であるflf1のショウジョウバエ変異体を作出し、flf1変異体においてもリン酸修飾ゾーンが減少することを確かめた。一方で、flf1変異体の成虫翅において顕著な表現型は観察されなかった。以上の結果は、flf1はリン酸修飾ゾーン形成に必要ではあるが、ショウジョウバエの正常発生には必要ではない可能性を示唆している。(石川) (3)ジストログリカンのリビトールリン酸修飾の特異性を決定する因子の探索をすすめ、リビトールリン酸修飾のドナー基質をゴルジ内腔へ輸送するトランスポーターとリビトールリン酸修飾酵素が近傍に位置していることを見出した。更に、トランスポーターとリビトールリン酸修飾酵素のいずれにも結合する分子を同定した。この分子を欠損させるとリビトールリン酸修飾に異常が生じた。以上から、酵素・基質輸送体が複合体(ゾーン)を形成し、リビトールリン酸修飾を制御している可能性が浮上してきた。 また、ジストログリカン糖鎖異常症(リビトールリン酸異常型)のモデル動物を作出した。このモデルにおいては、リビトールリン酸修飾ゾーンは形成されているものの、基質がないため機能を発揮できないタイプといえる。このモデルのリビトールリン酸不全を解消し、筋ジストロフィー治療効果をもつ化合物を開発した。(金川)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GPI修飾ゾーンとしての核膜ゾーンを同定し、その機能と形成機構を明らかにしたことに加え、核膜ゾーンの新たな役割を見出した。リン酸化ゾーンについてもその形成機構に関与する分子を同定することができた。またリビトールリン酸修飾ゾーンについては、その形成機構が明らかになりつつあることに加え、このゾーンの異常によって引き起こされるシストログリカン異常症(筋ジストロフィー)の治療薬候補を得ることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)核膜ゾーンの新たな機能を明らかにする必要がある。核ラミナの機能として、核膜の強度、核内外の選択的輸送、染色体の核内配置などが正常に維持されているか検討する。 (2)ショウジョウバエのゲノム中には、flf1のパラログと予測されるflf2が存在することを見出した。そこで今後は、flf1とflf2が冗長性をもって機能する可能性を考慮して、flf1だけでなくflf2に関しても解析を進める必要がある。 (3)酵素・基質輸送体複合体からなるリビトールリン酸修飾ゾーンを、イメージング技術などを応用して実証する。リビトールリン酸異常型筋ジストロフィーモデルマウスの治療研究を進める。
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